1940年のシチリアで12歳の少年レナートは、美しい若妻マレーナの存在を知り、たちまち魅了されていく。しかし出征した夫が戦死の報を受け取ったことから彼女の人生は次第に狂い始め、転落の果てに村の女たちから虐待を受けてしまう…。『ニュー・シネマ・パラダイス』 『海の上のピアニスト』の名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督が、少年の視点からひとりの女性の数奇な運命をつづるヒューマンドラマ。
前半はイタリア映画伝統の思春期艶笑劇のように描きながら、後半それをひっくりかえすかのように残酷な描写を見せつけ、さらにその後でさわやかな涙をこぼさせるという巧みな語り口の妙もあって、小品ながらも忘れ難い秀作に仕上がっている。大人の色香漂うマレーネ役のモニカ・ベルッチの美しさと、それに負けない熱演ぶりも印象的だ。(的田也寸志)