クティのレコーディング作品は膨大なため、選りすぐってCD2枚に収めるのは難しいが、にもかかわらず本作は、この「黒い大統領」(1981年の名作アルバムにちなんで名づけられた)のベスト盤は、並外れた男とその音楽へのすてきな入門盤と言える。本作には、バンドメンバーの詳細はなく、各曲のオリジナル音源の表示もないが、それはほとんど問題ではない。というのも、フェラのバンドであるアフリカ70は大所帯で、絶えず再編成され(ごくまれに70人にもなることがあった)、常に同行したバックコーラスのシンガーたち30人の多くはクティの妻(!)だった。本作は全編通して、ビートは揺るぎなく、ソロは決して過剰にならず、癖になりそうな力強いリズムは常に抜群だ。結局のところ、フェラ・クティの音楽とその生涯が切っても切れないものならば、少なくとも、本作をプレイして、リスナーの魂をこのグルーブにゆだねることにこそ本当の喜びがある。(Mark Walker, Amazon.co.uk)