Man in the Dark
価格: ¥1,888
ポール・オースターの『Man In The Dark』は、各地で紛争が絶えない世界の多くの現実をテーマにした優れた衝撃的な小説
72歳のオーガスト・ブリルはヴァーモント州にある娘の家で、自動車事故で負ったけがから回復しつつある。書評家であった彼は夜に眠れないとき、忘れたい記憶を頭から追い出すために、さまざまな物語を考えている、その記憶とは最近の妻の死、そして孫娘の恋人タイタスが無残に殺害された事件だ。
ブリルはイラクで戦争をしているアメリカではなく、内戦のさなかにあるアメリカというパラレルワールドを想像する。その別のアメリカでは世界貿易センターは倒壊しておらず、2000年の大統領選挙の結果によって国家の分裂が起こり、州が次々に連邦から脱退して血なまぐさい内戦が勃発しているのだ。夜も更けていくうちにブリルの物語は次第に強烈なものになり、必死に避けている思いは、かえって語られたがっているかのように消えてくれない。ブリルは明け方にやってきた孫娘に徐々に心を開き、自分の結婚生活についての話をする。孫娘が寝入った後、彼はついに勇気を奮ってタイタスの死にまつわる心に受けた深い傷と向き合う。
熱い感情が込められたショッキングな『Man In The Dark』は、まさに私たちの時代の作品といえる。私たちに夜の闇を突きつけるともに、おぞましい暴力が起こりうる世界にもごく平凡な喜びがあることを称える本だ。