勧善懲悪でない世界
★★★★★
漫画に限らず、私が物語を読むときは無意識のうちに勧善懲悪を期待している。
悪は罰せられるべきで、努力は報われるべきで、善良な者には幸せが訪れるべきだと。
今この登場人物が受けている苦悩は後にカタルシスを得るために必要なのだと。
この巻では全て裏切られた。
読者がずっと見守ってきた千花ちゃん。読者の誰もが知る千花ちゃんの気高く美しい心が、ずたずたに傷つけられ乾いていくのをただ見ていることしかできない。そして溜め込まれた鬱憤は晴らされることがないまま、物語は終局を迎える。
千花ちゃんを愛していた人だけが傷ついて、千花ちゃんを貶めようとし続けた者にはなにも起きない。悪は罰せられず、努力は報われず、善良な者に幸せは訪れない。
山岸先生の描写力、構成力に脱帽する。キャラクターへの偏愛でストーリーをねじ曲げたりしない、一流の漫画家。その力によって、登場人物たちと同じく千花ちゃんを愛する読者は深く傷つけられたのだ。
六花の「あの子の意識を根本から変える何か」になった千花ちゃん。願わくば第二部で千花ちゃんの魂が救われますように。
おすすめ!
★★★★★
第一部、完結の巻。
千花や六花をはじめとする、篠原家の人々、そして彼らをとりまく面々にとって、過酷な展開が待ち受けています。
わたしは、この筋、ちょっと、あり得ない! と思ったなあ…
いかに、才能にめぐまれ、有望視されていたとはいえ、 千花は、まだ中学生(怪我をした時点では…)。
ふつうの子どもなら、これからやっと夢をみつけて、 それさえも投げ出したり、取り替えたりしながら、 なんとか自分の力で、生き始めていくところ、という年頃なのに…
お母さん(篠原先生)も、自分を責めていましたが、本当にその通りだと思う。
ひとりの母親としては、バレエに打ち込むなかでも、 それ以外の人生の楽しみとか、生きていく味わいを、伝えてあげてほしかった…
(それだけ、厳しく、よそ見する暇もない世界、ということなのかもしれないけれど。)
追い込まれてしまった少女の魂に、合掌。
そして、この悲劇を受けて、新たな使命を胸に刻んだもう一人の少女に、心からエールを贈りたいと思います。
第二部も、楽しみですo(^-^)o
小学生の娘に読ませるには・・・
★★☆☆☆
あらかじめ、内容を確かめず、小学二年生のバレエを習っている娘に読んでもらおうと思って10巻セットを買いましたが、1巻から3巻まで、ちょっと小学生に見せれないページが出てきて、とっさにカッターナイフでそのページを切り取るはめに。小中学生の親としてはよく内容をたしかめてから購入するべきでした。ふさわしくないページをはずしてから子供に与えました。
永遠の舞姫
★★★★★
テレプシコーラで一番好きなキャラクターが千花ちゃんだっただけに、10巻を読んだときの喪失感は計り知れなかった。
バレエの才能もさることながら、誰よりも努力家で負けず嫌い。
弱音を吐くことも知らないような彼女が、あんなになるまで追い詰められていたとは…。
もう、キラキラした表情で優雅に踊る千花ちゃんが見られないと思うと、漫画なのに悲しくてやりきれません。
何度も読み返すほど面白い漫画ですが、10巻だけは読み返すのにも覚悟がいりそうです。
涙
★★★★★
読みたくてたまらないのに、先を読むのが怖くて、
指の間から覗くような気持ちで読み進めました。
そして、とうとう千花ちゃんが!
ずっとずっとはりつめていて、とうとうきてしまった瞬間。
かわいそうでかわいそうで、今文字を打っていても涙が出てきます。
山岸先生のお名前はずっと知っていたけれど、
少女マンガの昔から有名な人という認識しかありませんでした。
でもテレプシコーラの評価が高かったのでふと読み始めたら、
こんなにはまってしまいました。
こんなにすごい人だとは知らなかった。
こんなにも、逃げたくなるくらいハラハラさせられるなんて。
かわいらしい姉妹を応援する、厳しいけれど優しい周囲の人々。
しかし、おとぎ話で終わらせない、痛すぎる現実をも描く奥の深い世界。
甘ったれで、でも千花ちゃんを誰よりも好きで、誰よりも応援している六花ちゃん。
その六花ちゃんが「強く」なるきっかけが、こんなカタチできてしまうなんて。
六花ちゃんの未来は楽しみだけど、背負ったものがあまりにも重い。
もしも、「少女まんが」だからとか、「女子が読むまんが」だからと
倦厭している人がいたら、大損します。
大人買いするのにぴったりの読み応えのある物語です。