普通の切なさはない。その代わり誰も知らないところで何かを育てるような・・・。
★★★★☆
気持ちがうろうろしながら時間を重ねていくリーマン同士でいとこ同士ってのが淡々と書かれていて、内容はえぐいっちゃあえぐいけど、それでも穏やかな何かが伝わってくる。
切ないラブストーリーと帯には書かれているが、切なくはない。
お互いに好きな気持ちは全くかわることがないのでそういう意味での「切なさ」がないから。
そして結局お互いに本気で付き合いをやめる気はないと行間から読み取れるので「切なさ」はない。
それよりも、「雨降って地固まる」みたいな、誰も知らないところで二人だけで種植えて肥料やって育てる、みたいな、そんな話。
同時収録もあってそれほど長い話ではないが、十分に二人の葛藤だったり距離感だったりが伝わってきて、これだけのコマで伝えられる今作品はすごいと思った。
禁忌って楽しいんですよね。危うければ危ういほどに…。
★★★★★
表題作は「いとこ同士」「けど…」「逢びき」「森に行った日」の4編が飛び飛びになって収録されています。途中に「黒いレインコート」「作品解説」「人魚の破片」が全く関係の無い短編として入っていますが、はて?どうして「いとこ同士」シリーズを一気に前にまとめて持ってこなかったのか不思議です。確かにタッチは少し違っていますが、今さん曰く「男の子って突然成長して誰だか解からなかったりしますよね」のごとくギャって言うほど同人誌の時とは変わっていないと思いました。今さんが萩尾望都さんを尊敬しているせいか、同人誌にはちょっとその面影が見えるように思います。キャラクターの切ない感情がほとばしり出ていて、とにかく一緒にいたい気持ちが、苦しいくらい伝わってきます。時々、修と朝輝の顔が見分けつかなくなったりしますが、それだけ「いとこ同士」なんでしょうね。他、2編はちょっと暗い感じで、でも神秘的で、でもってギャグだらけだったりして面白かったです。
切なくて何度も読み返しました
★★★★★
表題作の「いとこ同士」のシリーズがとても好きです。台詞やモノローグが詩的で美しく、古い作品ですが現在の今市子さんの世界そのままだと思いました。笑える場面は少なめです。 小さな時から仲のよかったいとこと長い空白の末結ばれ、その後お互いの両親への罪悪感などから不安や苛立ちを募らせながらも離れられない二人。読後も余韻が残って何度も読み返しました。どうしても幸せになってほしいので自分で勝手にどうしたらハッピーエンドにもちこめるかを考えてしまいます。同時収録の「黒いレインコート」「森に行った日」も良かったです。今市子さんの作品しかBLは読んだことがありませんが、いずれも内面を深く掘り下げてかつ美しく上品に表現していると感じます。是非沢山の方に読んでいただきたいです。
初期の作品
★★★★★
今市子氏の古い作品(同人誌時代の)です。
でも、この頃から短い話にいっぱい詰め込むところとか、あったんですね。
読み応えのある一冊です。
好きなのは、表題のいとこ同士。
「いとこ同士」「けど」「逢いひき」「週末」の4作品からなる話です。
いとこ同士(男同士)の修と道隆。
お互いに思い合っているのに、いとこ同士だからなかなか素直になれない2人。
それに家族も絡んできて、2人の葛藤がどんどんこじれていって…。
ボーイズラブなのですが、それだけには留まらず、会社の同僚や先輩なんかも絡んできて、複雑になっていきます。
絵がちょっと暗いかな?という感じですが、読みやすさは今のままです。
うーん、描線がキレイ!
★★★★☆
扉絵を見たシュンカン、あ、描ける人だ、と思いました。
サラサラと描いたような小さなイラストなのに、コートとスーツの布地の質感があんまり適確で、しばらく見とれてた。
『大人の問題』などのコメディー路線とは大きく違う、ちょっと暗めで抒情的な、独特の世界が広がります。『森に行った日』『人魚の破片』など初期のボーイズラブ作品がまとめて読めるのもグッド。
このテイストが好きな方には『B級グルメ倶楽部』収録の木村&為ちゃんシリーズもおススメします!