ホラー漫画『百鬼夜行抄』の今市子が男性同士の恋愛を描く「ボーイズラブ」系短編集。本書が、美しい男たちが激しく美しく恋をするという「ファンタジー」になっていないのは、現代社会ではいまだ生じる同性愛であるがゆえの障害や苦悩を、決して劇的にではなく淡々と描いているからだろう。
表題作「B級グルメ倶楽部」は、描き下ろしの続編とともに収録。吉野は、高校時代憧れていたバドミントン部の先輩、鬼塚と職場で偶然再会する。相変わらず横暴で不可解な鬼塚の行動にとまどう、気弱な吉野だったが…。高校時代に、同性愛者であることをカミングアウトした吉野に、鬼塚が言ったセリフがいい。「みんなはお前がゲイだから嫌なんじゃなくて お前と一緒にいると落ち着かないんだよ / それはお前が日常会話にセックスを持ち出したからだよ / (中略)自分が対象に含まれるセックスの話題を持ち出されると 人は自分がくどかれてるように感じるんだよ」。著者の深い洞察力が光る。
そのほか、代議士の息子と元代議士秘書の再会を描く「微笑」など同人誌掲載作品もたっぷり読める。大学を舞台にした木村と為永のシリーズ(3話収録)はホラーの要素が色濃く、『百鬼夜行抄』ファンにとっては著者らしく映る作品。だが、本人いわく「自分がホラー漫画を描くなんて考えたこともなかった」という。そんな裏事情が読める「作品解説」、病院のベッドでネームを描いたエッセイ漫画「病院日記」も収録。(門倉紫麻)
everlasting comics
★★★★★
今市子の初期作品が読める。本編よりも魅力的かもしれない。
今先生は「恥ずかしい」とおっしゃっている。まあそうだろう。「いとこ同士」同様、未熟だから。でも、私のようなファンにはたまらない。
今先生はボーイズラブをファンタジーとして割り切っている。
「僕のやさしいお兄さん」などでは読めない美しさでいっぱいである。「初々しい」状態で描かれた漫画がここまで輝いて見える例があるだろうか。お世辞抜きで美しいのである。
私は涙できる。私事だが、大学時代は決してハッピーじゃなかったので。
先ほど「ファンタジー」だと書いた。だが描写がリアルなのに注目を。地に足がついていて、その状態で日本舞踊を演じているのだ。とても初期作品とは思えない。
この感覚…川原泉の初期作品みたいだ。
あれ?なんかちがう・・・
★★★☆☆
私はなぜかB級グルメ倶楽部の2巻を先に購入していて、吉野と鬼塚のそれまでの話が読めるものだと思い1巻を買ったのですが、
二人の話は2話だけで、他5話は同人誌時代の、ヨッシー&鬼とは何の関係も無いものだったので
ちょっとガッカリしてしまいました。
まあ、その5話も良い作品なので いいと言えばいいのですが・・・
でもやっぱり「B級グルメ倶楽部」として出すのは反則です(泣)
ホラーとボーイズラブ
★★★★★
木村為永シリーズの「絶対零度」「ー6m」「灯火をかかげて」の3作品が好きです。
為永のもとに奇妙な荷物が届く、あるはずのないバス停から先輩が消える、誰も居ないはずのクラブ小屋に灯りがともる…。
そこから、為永は恐怖に突き落とされていきます。
頼る相手は、為永のことを好きだという隣の住人かつ同じ大学に通う、木村。
そこから2人は急接近していきます。
ボーイズラブというより、ホラーが入っていて、百鬼夜行抄のルーツはここ?!とちょっと感激。
その話も上手くできていて、やっぱり今市子氏すごいな〜と惚れ惚れ。
木村くんがイイ!
★★★★☆
表題作はテンポの良いリーマンコメディー。さらりとしたテイストが好きな方に受けそうです。
同時収録の『絶対零度』シリーズは、私にボーイズラブへの偏見を捨てさせた作品。昔、雑誌で偶然読み、これだけウマければボーイズラブでも許せるなー、と唸らされました。
今市子はストーリーの構成力がすばらしく、また、ネームではなく絵で物語る力を持っている人。特に短編を読んだ後の充実感はカクベツです。
ボーイズラブ好きな方も、そうでない方もぜひ、読んでみて。
BLとして自然体。
★★★★☆
表題作と病院日記だけで☆4つ進呈。
同人誌からの収録作品はちょっとテイストが違うので、同時収録としては無理があったような気がしないでもないが、これくらい差がある組み合わせじゃないと、他に収録する機会もなかったかもしれない・・・というくらい、古いものほど堅苦しい(笑)
表題作以外はどちらかというとJUNE的雰囲気が残っている。つまり、「恋愛モードにもちこまなくちゃ」「不幸の香りがスパイスなのよ」という定番路線の名残。今作品は耽美要素とBL要素を潔く切り分けた方が魅力的だと個人的には思うので、表題作の力んだ感じのないライトな流れが好み。無論、同時収録作品も、そういった耽美一辺倒の短編集に組み込まれていたらもっと評価が高かったのだろうけど。なんというか、前半後半で場違い感の否めない構成の1冊になってしまっている・・・勿体無い。
主人公たちのコンビニパンへの思い入れが妙にツボ。そうそう、私もジャムコッペは○○のしか買わない、とか、××のおにぎりの具の入れ方がイイのよねぇ、とか我が身を振り返りつつ読むもよし。続編もあるので単行本化が楽しみ。