全体は3部構成になっており、第1部ではRMIの設計と実装としてRMIの基本的な機能の解説やサーバへの機能割り当て、リモートインタフェースの設計、バンキングサーバの実装をとおして一連の設計指針を解説している。第2部ではスケーラビリティの実現について解説している。直列化やスレッドの実装、RMIレジストリ、ネーミングサービス、RMIランタイムといった内容を取り扱い、サーバをスケールする技術について述べている。第3部はより高度なトピックとしてカスタムソケット、動的クラスローディング、セキュリティポリシー、マルチスレッドクライアント、HTTPトンネリング、そして他の分散アプリケーション構築基盤であるCORBAとの互換性について解説を行っている。
本書はRMIの解説書として過分に複雑なコードを避け、バンキングシステムを実装の例として用いることでセキュリティやスケーラビリティを効率よく解説しており、基礎的な内容から高度な内容までを取り扱いながらも読者が理解しやすいようにバランスよく構成されている。Javaについては解説していないため、Javaのコーディングにはひと通り精通している必要があるが、RMIを知らなくても十分使いこなすことができる。RMIを学びたい人にはぜひおすすめしたい。(斎藤牧人)