3121
価格: ¥2,548
『3121』を証拠の山に加えよう。プリンスは黒人のベックだ。プリンスのほうがぐっとセクシーであることは疑いはないが、両者ともイメージ以上に優れたミュージシャンだ。ひとつはとにかく風変わりな点で。もうひとつはエッジがある点で。このふたつを結びつけ、この10年でもっとも重要な音楽と言えそうなものを創造する極上のセンスが、プリンスにはある。物議をかもす第1弾と第2弾のシングル「Black Sweat」と、サウナでのぼせたような「Te Amo Corazon」のビデオに登場するプリンスは年齢を重ねたとは思えない。そんな彼は昔と変わらず、怖い者知らずだと証明している。ディスコ・ファンクの重量感をロックへ折り込んでいき、ソウル風味のジャズを支えにヒップホップをたっぷりと載せ、オールドスクールのR&Bのリフにラテンのリズムを叩きつける。なめらかでスタイリッシュでスマートなものは皆無。これほど見事に曲を繰り出してくる者は他にいない。しかも、繰り出す曲はむこうみずな音速のごたまぜであるのに、見事なのだ。プリンスのリリースにまつわるいつものハイプはこれだ――そこそこの価値のあるアルバムで、長い目で見ると、傑出した曲も数曲は期待できる。ダンサブルな「Love」、ゴスペル的なファルセットの饗宴「Satisfied」、そして夏のそよ風のような「Beautiful, Loved & Blessed」などを収録。