舞台はアメリカ全土。超悪性のウィルスにより、死者が続出する。このウィルス、死亡率が99%というだけでなく、空気を通して、ごく短時間で感染するのだ。ちょっと風邪ぎみかなと咳き込んだその日のうちに死に至る者も少なくなく、全米でほとんどの人が死に絶えてしまう。しかし、中には感染者や死者と接しているにもかかわらず、生き残る者もいた…。
完全無削除版というだけあって、そのボリュームは半端ではない。上下巻に分かれてはいるものの、上巻だけでも約800ページもある。それでいながら、ぎっしり詰まった膨大な量の言葉が紡ぎ出すキングの世界に、読む手を休めることができない。日常的な場面からいつの間にか非日常的な世界へ引き込まれていく、そんなキングの手法が本作品でも生きていて、「なぜ?」の答えを知りたいがために次々とページをめくってしまう。ウィルスに感染する状態を「感染」という言葉を使わないで状況描写で表現してしまうところがキングの筆力なのだろう。周囲で「ごほっ」と咳の音がするだけで恐怖が押しよせてくる。どこまで読んだら、答えに気づくか。それはキングが読者に突きつける挑戦かもしれない。一気に上巻を読んでしまうと、下巻に手を出さずにはいられなくなる。(つちだみき)