1冊目もよいけれど続編もクオリティ維持。
★★★★☆
本書のキーワードは"つながり"、"関係"だそうです。
社会とのつながり、歴史という大河の中の自分。その橋渡しをするのが仕事、という
著者のポリシーを基盤に、有名人や小説家の名言を引用して、働くときに大切なことを説くエッセイ。
正直特に独創的なことは書かれていないですが、説教くさくも押しつけがましくもなく
心に"すとん"と落ちてきて、いつもは意識していない大切なことを思い出させてくれる本です。
第1作目である前作に感銘を受け、本書も購入しました。順不同でどこからも読めます。
最近の、定職に就かない若者の増加や失業率の上昇を受けているのか(笑)
こういった、「働くこと」についてのエッセイが増えた気がします。
3章("自分の価値観を知る")、7章("迷う力、決める力")に特に共感できました。
特に好きな言葉は、以下でしょうか。
3章
――『人間は、結局、ここだけは死んでもゆずれないぞ、という線を守っていくしかないんだ。
その、ここだけはゆずれないぞ、という線を、いいかえれば、自分の生き方の軸を、
なるべく早く造れるといいんだがなァ。
(以下略) 色川武大『うらおもて人生録』より p52』
7章
――『道に迷うことは道を知ることだ。(スワヒリ語のことわざ) p104』
――『やり方は3つしかない。正しいやり方。間違ったやり方。おれのやり方だ。
マーティン・スコセッシ『カジノ』より p113』
道に迷うことは道を知ることだ。
★★★★☆
前作は、すんなり染み込んでくる。
今作は、じっくり染み込んでくる。
例えるなら前作はカレーのルー、今作はスパイスという感じ。
(と書いて微妙な例えだな、と思ったが続ける)
働く理由というよりもジンセイ論の比重が大きく感じる今作では
ただ書かれていることを読んだだけでは「なるほど!」とならない。
書かれていることを考えて、理解し、行動した上でやっと
「なるほど!」と実感することができるのだろう。
即効性を求めるなら前作を、持続性を求めるなら今作をおすすめしたい。
私のお気に入りは
『何かをすると、ときにはまちがうこともある。
だが、何もしないのはいつもまちがいである。』という言葉。
読もうかどうしようか迷っている人はとりあえず読んでみるべきである。
前作同様寄藤文平さん、鈴木千佳子さんによるブックデザインは
目を引く上に紙質など細部にもこだわって創られていて、それも嬉しい。
少し難しかった。けどすごい。
★★★★☆
働く意味が全くわからなくなってしまった時に前作を読み、
救われました。
誰もが前を向いて行こう!って言いますが、
もっと具体的にどうしたらいいのかがわからずモヤモヤしていた時、
前作はスコーンと壁を突き破ってくれました。
そして楽しみにしていた続編を読みましたが、
正直難しい文章がありなかなかスーッと頭に入りませんでした。
でもその理由は私の人生経験がまだ足りてないからだと思いました。
何度も読み返すうちに理解できてくる、そんな本です。
自然と読み返してしまいます。
手元に置いておき、経験を積んでからまた読み返すと
何かが見えてくるのかもと感じました。
ここまで「働く」ということを分析した書籍はないんじゃないでしょうか。
もう学術書のようです。
転職関係の本の中では群を抜いていると思います。
明日の仕事を頑張ります。
4つ星ですが、前作を読まれた方は必読です。
お気に入りの言葉
『やり方は3つしかない。
正しいやり方。間違ったやり方。俺のやり方だ。
マーティン・スコセッシ「カジノ」(映画)』
働くこと、を哲学した幸福論。
★★★★☆
この作品は、一見、あらゆる分野の第一線で活躍する人たちの
「シゴト」に関する名言をコンパクトに紹介する本のように思うかもしれません。
確かに、この作品は十分にその機能を果たしています。
歴史的な哲学者から、芸人まで、著者の名言を選ぶセンスはとっても面白いし、著者オリジナルの解説も深遠で思わず、うん、うんとうなずいてしまうものばかりでした。
でも、後で読み返すときのために、共感できる名言をチェックしていたら、振り返ると著者の文章の方にもたくさんマーカーをしていた・・・。そのくらい、“名言”に負けず劣らず著書の言葉には力があります。つまり、名言を無色透明なボンドで貼り付けただけの編集本では、ないのです。
だからこそ、仕事に関する漠然とした悩みを”サクッ”と解決したいとか“とりあえず”仕事のモチベーションを上げる理由が欲しいという、「インスタントな起爆剤」を求めている方には、いい意味で期待を裏切るものになるかもしれません。この本には、よくある自己啓発本や就職活動本のような、著者の用意した答えや、読者が就職活動の際に自分を言いくるめるための言葉は載っていません。きっと、そういう本で納得した気になっても、本当の「働く理由」-幸福にはたどり着けないからでしょう。
この作品は、まっすぐに、働くことと生きることを考えるためのガイドをしてくれる本です。
ちなみに、私の気に入った名言はこれ・・・。
とっても、著者らしいチョイスだと思いました。
***
どんな仕事をしていようと
どういう身分であろうと
悟ることが出来るのだ
いつも次のことを考えなさい
いま自分はなにをしているのか
自分のしていることは
自分にとって大事なことなのか
人にとって大事なことなのか
そして大勢の人にとって大事なことなのか!
国中の人にとって大事なことなのか
世界の人にとって大事なことなのか
この自然にとって
あらゆるいきものにとって
大事なことなのかよく考えなさい
そしてもしそうでないと思ったらやめるがよい
なぜならこの世のものは
みんなひとつにつながっているからだよ
手塚治虫『ブッダ』第9巻(講談社)
「生きるとは自分の物語をつくることである。」
★★★★★
著者戸田智弘さんが選んだ99の「至言」と、そして著者自身が書き下ろした「言葉」のなかから、気に入ったものを後で読み返そうと、ページを半分に折り返しながら読み進めていった。
読後数えてみたら13箇所もあって本が厚くなってしまった。
この不恰好になってしまった本は、しかし、ずっと私の手許に置かれ、人生で迷いが生じたり挫折感に慄いているときに、何度も何度も読み返すことになるだろう。
例えば・・・
「君たちの時間は限られている。だから自分以外の他の誰かの人生を生きて、無駄にする暇なんかない。(中略)自分の内なる声、心、直感というのは、どうしたわけか 君が本当になりたいことは何なのかを、もうとっくの昔に知っているんだ。スティーブ・ジョブズ」(P113)
今年、私は経営資本参加していた合弁事業から撤退する羽目に陥った。
傷心で膝を抱えているときに、スティーブ・ジョブズのこの言葉に触れた。
号泣した。
悔しかったからではない。
「何もしなければ道に迷わないけれど、何もしなければ石になってしまう。阿久悠」(P107)
自分は石にはならなかった。
自分で選択し、「自分の人生」を生きたのだと実感できた喜びから涙が流れたのだ。
自分と同じ人間はこの世にふたりと存在しない。
その独自性は貴重だという。
「もし自分が、その唯一のものを発揮せずに人生を終えるとすれば、自分によって実現され得たであろうものが、永久に実現されないままに終わる 山田邦夫「<自分>のありか」(世界思潮社)」(P216)
宇宙の歴史の中で、後にも先にも唯一の存在であるこの自分が、この世に生を受けて得た気づきを、実践せずに終わる・・・
それは石になるよりも怖いことだ。
ではどう生きるか?
戸田さんは「生きるとは自分の物語をつくることである。」と語る。
「『自分の物語』という以上、『自分で考えて』『自分で決定して』『自分で実行すること』が、何をおいても大事なこと。この3つができていればそれで十分である。それ以上のこと、すなわち結果まで求めたりすると苦しくなる。それは神の範疇だ。結果を恐れず一歩一歩前に進んでいく、その過程こそに意味がある。」(P230)
それは神の範疇だ・・・
合弁事業も、
自分で考えて
自分で決定して
自分で実行した。
「撤退」は結果であり、神の意思の範疇だったのだ。
戸田さんは、「はじめに」でこのように読者に語りかける。
「至るところに「つながり」や「関係」という言葉が出てくるのに気がつくだろう。これが本書のキーワードである。」と。
最終章まで読み終えたとき、ばらばらに思えた99の至言が、「つながり」をもって、読者の人生に「関係」を持ち始める。
私が例示したように、読者の人生の問題に、人生の達人・先輩たちががそれぞれの至言をもって答えてくれるだろう。
その時読者は、人生最良の座右の書と、そして戸田智弘という人生のメンターとつながったことにもなるのである。