もう一人の主人公、賀来(かく)神父。
★★★★★
結城の狂気は、とまらない。
復讐というよりも、渇きを癒すために水を飲むように、人を殺していく。
結城の一番の被害者で恋人でもあるのが、もう一人の主人公、賀来神父だ。
結城も賀来も男で、プラトニックな関係ではない。
賀来は、結城の犯罪にくるしみながら、手助けしてしまう。
離れられないのだ。
結城も賀来のことは、利用するというより信用でから、犯罪の道行きをたのんでいる。
おもしろいのは、主人公の二人が、鏡写しの関係でないことだ。
結城は神経ガスの後遺症で苦しむが、罪の恐れはない。
賀来は、罪に苦しみ、その苦しみにつじつまをあわせることで正当化しようとする。
同じ月を見ていない。住んでいる星が違うという、狂気。
狂っていることを大騒ぎすることなく、描ききっている。