イデオロギーに翻弄される人間の愚かしさ、悲しさを描く大作
★★★★★
自ら作り上げたイデオロギーと、一個人としての自分との矛盾に縛られ苦悩する独裁者アドフル・ヒトラー。
そのナチズムによって引き裂かれる2人の少年アドルフの友情は、やがて深い対立と憎悪を生み出し、互いの家族を殺し、最後には殺し合う結果を招く。
登場人物の多くが、軍国主義、共産主義、シオニズムなどイデオロギーの生み出す奔流の中で、もがきながら生きる様子が描かれている。
個人として何の恨みが無くても、所属するコミュニティや信奉するイデオロギーによって人は対立し、殺し合いさえする。
しかし、人々はその大きな社会の流れに逆らって生きる事は出来ない。
人間、社会、思想、戦争などについて深く考えさせられる壮大な作品でありながら、高いエンターテインメント性も併せ持つ傑作。
暗黒時代を描き切った傑作
★★★★☆
第二次世界大戦中のナチスのユダヤ人狩り、日本での特高警察のアカ狩りの中で
必死に目標を遂げようとする人達の話です。
ナチスや、特高が相手を追い詰めていく様が全編にわたってむごいです。
なんとも恐ろしい時代です。
ストーリーは完成度が高く、キャラがうまく繋がっていて一気に読みたくなります。
作者が戦争や人間の悲惨さ、おろかさをよく知っていてそれが見事に描かれています。
戦争?何それ美味しいの?
★★★★★
ボブディランの「君の立場からすれは君は正しい、僕の立場からすれば僕は正しい」というリリックを思い出しました。自らを正義、互いを悪となす現代に最も映える作品のひとつですね。僕は現在二十二歳ですがこういう尊い作品を通して、「戦争を体験していない世代がいかにしてそれを憎悪出来るか」という問題にぶつかってしまいます。僕たちにとって、戦争はいまだ興味の範囲内だと。ジョンレノンの言う想像力で、どこまでいけるのかというのが、平和を望む者の課題ではないでしょうか。新井英樹「ザ・ワールド・イズ・マイン」もそういう事をいろいろと考えさせてくれる作品でした。偉大なる両漫画家に最敬礼。
手塚治虫を読んでほしい
★★★★★
第二次世界大戦当時の日本とドイツを舞台に、アドルフという名前をもつ3人の男がたどった運命を描く長編マンガです。
単行本化された時に読みましたが、読んでも内容が消化できませんでした。20年経ち再読してあらためて衝撃を受けました。古いどころか、今だからこそ読む価値があると思いました。政治、そして戦争の不条理が満載されています。後半に描かれた阪神神戸の空襲は実体験をもとにしていると思われます。連載中に病気でいくどか休載になったそうですが、命を削って書き残された作品かもしれないと思います。これを連載していた当時の週刊文春編集部もすごいです。
私は小学生の頃から、手塚漫画に育ててもらったようなものです。あらゆる生命が尊重される手塚ワールドの中で安心して生きてこられた気がします。手塚漫画を読んで明るい未来を信じて子ども時代を送れたのはなにより幸せでした。もっと長生きしていただきたかったと切に思います。
考えさせてくれる本です。
★★★★★
一言で言うと泣けます。
巨大な国家の前には愛情とか自分の思想とか
そういったものはこうももろいものなのかと考えされます。
それだけに平和を願う作品であり、
また自分がこの時代に同じ立場だったら
何ができたのだろうと思ってしまう。
ヒットラーの秘密をめぐったサスペンスから
話は広がっていくため
読み手を飽きさせない。
寝る間を惜しんで一気に読んでしまいました。