主人公も天才だけど、作者も天才
★★★☆☆
「め組の大吾」「カペタ」そして「昴(MOONの前編?全11巻)」(シャカリキという自転車漫画もありますが)
この人の作品に対して言えるのは、「読んでて疲れる」という事。
特に疲れるのが前作の「昴」ですが、悪い意味ではありません。
「読んでて疲れる」と言うのはそれだけ真剣に読まされるからです。
一冊読んだが最後、その集中力が何巻も続けさせられます。
昴の時にバレエ漫画では無い事を非難するレビューもありましたが、純粋なバレエ漫画が読みたければ他の漫画を読めばいいのでは?
この漫画は、その分野の天才を描き続けている作者が女性版の天才を描いた作品なのですから。
MOONからではなく昴から読むことで、より面白くなる作品です。
ただ、正直言うとMOONになってから主人公の爆発力が物足りないと思うのは私だけ?
運命を生きていく
★★★★★
今回、スバルを追い詰めたのはニコでした。
一時はソウルメイトとまで思っていたパートナーからの決定的な言葉。
それは、喪失ではあるがバレエと引き換えたという罪悪は生まれない。
その気持ちが向かった先は"怒り"でした。
1人で生きていく。
いつも思いますが、覚悟を決めた女性は美しい。
人と異なる速度で運命を生きるスバル。他人との違和感は拭えない。
やはりソウルメイトとなると同じ速度の人間なのでしょうか・・・
そして、パフォーマンスが始まる。
規定内の新解釈黒鳥は、観客を魅了する。凡人の量りではそれで十分。
だが、スバルはそこで留まる事を許されない。
終盤、妖しく光るスイッチが入る。
そう、スバルはスロースターターだった。
自分の生き方を自覚したとき、スバルの感情が異質な空気となって
観客に広がる。
刑務所では果て無き喜びだったが、今回はとてつもない怒り。
その怒りは誰にも理解されることはない。
そうやって1人だけ先へ先へ進む様は白鳥の湖から変わらない。
衝撃のド迫力で踊り続けた結果、ミンミンの踊りは10ページ。
これでは、本当の意味でスバルを追い詰めることはできないと思う。
スバルはブレる事で高みに昇る。ブレることで新たな答えを見つける
ことができる。ブレない人間なんて見てて面白くない!
感情に揺さぶられて悩み苦しむのが人間だ!
下手に悟るな!生きろ!スバル!
昴が帰って来た!
★★★★★
とても人間臭い、生きてる昴が帰って来た!
正直、裸眼で雪の結晶見たり、別の場所にいる人間と空中でぶつかったりする昴に「ついてゆけない…」と思っていた私。
いや、凡人がついてゆけないから、天才なんだけど。ゾーンとはそういうものなのだろうけど、私が体感できるのはランナーズハイ程度なので。
だがこの巻で、ようやく昴は長いジャンプを終え、地上に戻ってきた。感情を持ち、激昂する、反逆精神の塊の昴が帰って来た。
自分を型にはめようとするものを全身全霊で拒否する昴が。
ジークフリートの腕の中から飛び出したオディールの跳躍は、ニジンスキーの伝説のジュテを思い出して、爽快でした。
パッションで押し切る漫画
★★★★★
テレプシも好きなんだけど、これぐらい情熱をぶつけてくるバレエ漫画も良いですね。迫力が伝わってきます。
やはりニコとは舞台上のパートナーと割り切ってほしいですね。じゃないと、今回みたいなとんでもないことになるような。
今巻はロビーやシステロンの仲間が出てたのが嬉しかったです。
昴はバレエ以外でサポート出来る人としかうまくいかないのでは?と思います。ロビーは昴の凄さについ諦めちゃったみたいな感じだったけと、私はロビー好きでしたよ。あとあの捜査官も。彼には振られてしまったけれど。
擬似恋愛みたいなことしといて、あっさり裏切るニコ【本人も分かってるけど】といい、ライバル手放しで誉めまくりのKYなピーターといい、男性陣が情けなくもあります。
にしても、よく泣く2人ですね。昴、ミンミン。
まだまだプリシラの域には到達してない2人です。
ニコ? コンクール? 笑わせるな! スバル爆発!!!
★★★★★
誇りを傷つけられ、自分に腹立ち、葛藤しながら踊り狂うスバル。
スバルの内面に反し、スバルの踊りに魅了され、興奮する観客。
とにかく凄いエネルギーが、画から伝わってきます。
この不況で、ツライ目に遭っている人にこそ読んで欲しい一冊。
きっと元気をもらえます。