My Everything
価格: ¥2,065
即席でディーバを作り、スターの卵を買ってくる時代に本物を見つけるのは、干草の中から針を探すほど難しい。だが、アニタ・ベイカーが音楽界に戻ってくるのにこれほどふさわしい時代はなかった。10年の休止期間を経て、このソウルフルなシンガーは、熱望されていたブルーノート・レーベルでのファースト・アルバム、『My Everything』(邦題『マイ・エヴリシング』)を引っさげて戻ってきた。10曲入りのこのアルバムにがっかりさせられることはなかった。みずみずしくエモーショナル、ゴージャス、オハイオ州トレド出身のベイカーのこのアルバムを聴くと、そんな言葉が頭に浮かぶ。アルバムの幕を開ける冒頭のシングル曲「You’re My Everything」(邦題「マイ・エヴリシング」)はついひきこまれるスムーズなグルーヴで、彼女の過去の名曲を彷彿とさせる。アルバムには、前述のシングル曲のジャジーなバージョン、「You're My Everything Revisited」(邦題「マイ・エヴリシング・リヴィジッテッド」)も含まれている。ケネス・“ベイビーフェイス”・エドモンズも「Like You Used to Do」(邦題「ライク・ユー・ユースト・トゥ・ドゥ」)でベイカーと共演。このバラードは、バックの温かみのあるエレキギターがアクセントとなっていて、昔のR&Bサウンドを思い起こさせながらもそれ自身は古臭さを感じさせない。ほかに際立っているのは、「I Can’t Sleep」(邦題「アイ・キャント・スリープ」)と美しい「Close Your Eyes」(邦題「クローズ・ユア・アイズ」)だ。このアルバムに欠点があるとすれば、ベイカーの穏やかな声がたまに乱れることだ。それでも、『My Everything』は、スタイルと気品と本物の芸術性を持った音楽を提供するという点で、向上心に燃えるR&Bシンガーたちにとってお手本になるアルバムである。(Rashaun Hall, Amazon.com)