WATARIDORI コレクターズ・エディション [DVD]
価格: ¥4,935
種々の鳥たちが繁殖のために北を目指し、そして帰ってくる。そんな、100種類以上の渡り鳥の生態を、制作費20億円、撮影期間3年をかけ、世界40か国以上をめぐってつぶさに記録したのがこの『WATARIDORI』だ。監督はジャック・ペラン。『ニュー・シネマ・パラダイス』の成長した主人公役でおなじみのフランス人俳優だが、『ミクロコスモス』『キャラバン』といった、派手さはないが味わい深い作品をものしてきた映像作家でもある。
人間や撮影に使う機材に鳥たちを慣れさせるために、卵の段階からさまざまな工夫(調教、ではない)をしたというだけあって、流麗に飛行する鳥たちの姿を、度肝を抜かれるアングルでカメラは捉えていく。それ以外にも、「エーッ、どうやって撮ったのコレ?」という映像が次々に登場する(この作品をDVDで観る楽しみの1つは、間違いなく、撮影現場の裏側を観られることだろう)。一朝一夕では決して撮れなかったであろう、鳥たちの豊かな表情、意外な行動。それは時として美しく、時として滑稽で、時として残酷なものだ。その一つ一つに、心を奪われずにはおれない。
本作は2003年アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にノミネートされたが、監督自身はドキュメンタリーとは言えないとコメントしている。なるほど、確かに随所に「演出」が施されている部分があり、その点が気になる人もいるかもしれない。しかしこの壮大なスケール感、圧倒的な映像美、そして画面からにじみ出る、作り手から被写体への愛情を感じられれば、そんなことは些細な問題だと思えるだろう。(安川正吾)