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フーコーの振り子〈下〉 (文春文庫)

価格: ¥860
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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神の息吹 ★★★★☆
本作は神秘主義やオカルト学に単純に怖いものみたさや興味本位で手を出す人には向いていない。作中でふんだんに語られる、その手の話は面白いのだが、作者が言おうとしている事はそういう物は全て幻だという事なので反オカルトとも言えるのだがそれだけでは無い。世の中にある事象は全て何らかの関連性が付けられ探求と関連付けによって新たな物が創造され、それが人間の発展となっているのだが、必然であれ偶然であれ各々の恣意で結び付けられた物はとんでも無い物を産み出す可能性がある。それが正しいか間違っているかは時代によるが、生み出された物はその時点で存在意義を獲得するのである。前作の「薔薇の名前」から何も変わらないテーマの一つであり人間の愚かさをオカルト学を通して描いただけの作品であれば個人的には退屈極まり無い焼き直し作品となったのだが、もう一人の主人公ベルボの存在があるからこそ、この作品の凝った構成がより生きてくる事に気付く。またベルボは何かエーコ自身の投影の様な気がします。パルチザンの勝利を祝うトランペットを吹いた少年時代のベルボは神がセフィロトに息を吹き込んだ様に自らの生命=存在意義を作り出した神となったのであり、「自分が臆病と思った瞬間に初めて人間は臆病者になる」の言葉通り傍観者として決してスーパーマンに変身しないクラーク・ケントとして過ごした欺瞞の人生を懊悩し、繋がれたプロメテウスは最後に愛によって自らの鎖を解き放つのである。皮肉にも肉体は振り子の不動の点として代わりに繋がれ、例え自らの生を終えようとも。世界を制する力とはつまり自分を知る事という事を言いたいのだと思います。こうしたベルボの自己存在の経緯を主人公ガゾボンが彼と過ごした日々と彼の家のパソコンに残された文章から憶測していくという部分がこの作品のもう一つのミステリー部分でもあり、いつも通りのエーコの哲学と娯楽部分と互いに重なり合って雑多な様で纏まっているという不思議な作品を作り出している。そして世相を表す小道具や流行、時事問題も必要以上に書き込まれている気がする。おそらく200年後の世界では注釈だらけで出版され20世紀の世相を知る参考書の一つになるよう必然的に意図された技巧の様な気がするのは考え過ぎだろうか。
自分で自分をほめたいです ★★★★☆
はっきり言って、この先一生この話を完全に理解することは出来ないかも。
それでも十分おもしろかった。
たぶんヨーロッパ中世のいかがわしさに興味のない人には、
全然おもしろくない話だと思うけれど、
澁澤龍彦系が好きな人には、かなりおいしい話だと思う。

サスペンスフルな展開で、
テンプル騎士団の謎が少しずつ明かされていくところは、

これって本当の話なのかと思わせるくらい説得力があった。
未だにヨーロッパって裏でいかがわしい秘密結社なんかが
はばをきかせていても納得できる雰囲気があるしね。

それからクセのある登場人物の話や、出版界の裏話なんかも楽しい。
一番好きなのは、かなりモンティ・パイソン入っている
大学改革構想のところ。

まったく無意味な学科を創るという遊び(?)だけれど、
思わずニヤニヤして、自分でも考えてしまった
(「サハラ砂漠の群集心理」とか「南極農業史」とか
くだらないけど、頭は使う)。

とりあえず読み終えたことで、自分で自分をほめたくなるし、
これ読んだってだけで、インテリになった気分が味わえることだけは、
間違いないと思います。