第1巻から3巻までの復刻作品をざっと見たときは、失礼ながら、「しろうとの腕ならこんなものか」といった印象しか受けなかったのだが、これは、もとの原稿をなぞって原紙を切る「描き版」担当者の力量に左右されるもののようだ。第4巻に収められた「ぼくらの地球」や、他の未発表作品の原稿を見ると、このまま描き続けていったなら、おそらく手塚治虫の強力なライバルになったに違いないと思わせるだけのものがたしかに感じられる。
これらの作品中に見て取れる四次元や地質学への関心、地球の誕生から生命誕生、人類の出現までをパノラマ的に鳥瞰する感覚などに、のちの小説作品の原点を見ることもできるだろう。もしかしたら、私たちは「影が重なる時」をマンガで読めたかもしれないのだ。
最後の第4巻には、松本零士、さいとう・たかをらとの対談、インタビュー、解説記事などが収められている。小松ファンだけでなく、戦後漫画史に興味のある方にもおすすめしたい。