バイクメーカーの栄枯盛衰
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実は1980年に刊行された「オートバイの歴史―メカニズムの変遷と技術者達をめぐるドラマ」のデータをあらためたものの再刊である。著者は当時何と87歳で、巻末の自ら書いたと思われる著者略歴には「満80歳に達して以後は、衛生上オートバイの使用をさしひかえもっぱら四輪自動車に乗ることになり、今日に至る。」と結んでいる。なお、1988年94歳で永眠されている。
東大工学部教授であり、「オトキチ」でもあった筆者が、戦後のバイクブームを肌身で感じながら、一時は120社はひしめいていたであろうバイクメーカーの栄枯盛衰を活写した本だが、技術屋でありながら専門的な知識がなくても面白く読める人間ドラマが描きこまれていて、文化人類学者の山口昌男氏も著書の中で激賞していた。
写真も豊富に掲載されていて、バイクレース草創期の話などは貴重。当時小さな町工場のレベルだった「本田技研」がいかに成功していったかも書かれてあるが、当時社長だった本田宗一郎氏が「富塚のバカが」と著者を罵倒したことも紹介されていて(4サイクルと2サイクルの対立)、その著者の目から解説してあるのも面白い。