著者のこれまでにない熱が伝わってくる
★★★★☆
桑原武夫の「第二芸術論」をもう一度、根本から見直そうとした
著者の俳壇への舌鋒は鋭く、熱い。
子規から始まり、碧梧桐、虚子そして大正の俳人たち、
自由律、戦後の俳句と俳人・・・と俳句の道筋を
開けていく作業が続くが。
戦後の俳人たちと「第二芸術論」との関わりのあたりから
著者の熱さは最高潮となる。
とくに印象的なのは草田男論。
短歌から微妙な遺産を受け継ぎ
俳句から思想を紡ぎ出そうとしながら
中途半端にその志向をやめてしまったと
かなりに強い論調である。
もうひとつ。
上野千鶴子との対談はわかりやすい。
上野が自由律俳句を目指し、
俳句をやめてしまった核心まで
ふつうに語っているのは出色。
坪内がこれほど自説を主張した著はなかったように思う。
そんな印象の本格俳句論の著作。