Thirteen Days: A Memoir of the Cuban Missile Crisis
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1962年10月、キューバで攻撃用ミサイル基地建設の動きが発覚した。それは、ソ連が弾道ミサイルを含む攻撃用兵器をキューバに持ち込んだもので、当時世界は核戦争の危機に瀕していた。そうした状況下で行われた米国・ケネディ大統領とソ連・フルシチョフ首相との交渉。本書は、大統領の側近だった実弟のロバート・ケネディが当時のアメリカ合衆国の決断を生々しく語った回顧録である。
そこには、司法長官として常に身近にいるからこそ理解できる、兄ジョン・F・ケネディの苦悩と何としても危機回避を行わなければならない決意が描かれている。ともすれば軍事行動に走ろうとする軍部。したたかに虚実を交えた情報戦を図るソ連。こうした中で、大統領は迫りつつある核戦争の危機を、軍事力でなく外交交渉でいかに解決するかに腐心していた。危機の最中に弟にだけふと漏らす大統領の人間的なつぶやきが、この兄弟のきずなの強さを物語っている。
ケネディ大統領は、この翌年に行った演説で「わが死活的権利を守る一方で、核保有国は、相手側に屈辱的な敗北か核戦争のどちらか一方を選ばせるような対決を、避けなければならない」と語ったという。そして問題解決後、ケネディ大統領は自らとそのスタッフに対し、ソ連に屈辱を忍ばせるような言動をいっさい許さず、彼自身あるいは政権の手柄であることを示すような声明はいっさい行わなかった。もしこれが一つの勝利であったとするならば、それは次の世代にとっての勝利であり、特定の政府や、特定の国民にとっての勝利ではない、としたのである。この行為は、決して忘れてはならない卓見であるといわねばならないだろう。(杉本治人)