本著作では大学で学ぶことの意味に始まり大学での授業の選択方法や学習方法及び自ら主体的に学習する習慣を身につける方法に至るまで丁寧に大学新入生に説明している。特に自ら主体的に学習する習慣を身につける方法の内容は大学新入生にとって啓発効果があるだけではなく、二年生以上の学生に対しても有意義な内容であると思われる。自ら主体的に学習する習慣を身につけることは学生時代だけではなく、社会人になった後も職場など様々な場において重要な姿勢である。大学生の皆さんには是非この本を読んでもらいたい。
本著作の内容に関して、個人の意見も指摘したい。本著作の例の部分である。著者はとても丁寧な言葉で学習のノウハウを学生に伝えようとしている。ただ、学生にも勿論様々なタイプの学生がおり、本著作が想定するように真面目に学習・行動する学生も存在するが、現状では、社会問題（政治、経済など）に対して関心を持っていない学生も少なくない。如何にこのような学生に対して学習のコツを理解させ、主体的に学習・行動する姿勢を身につけさせるかは一番難しい問題である。したがって、本著作の例の部分に関しては、もう少し学生の社会問題に対する関心を引き出す例を多く挙げたほうが効果的であると考える。例えば、スポーツの話題など今の若者が関心を持っている分野を例に挙げて説明する方が効果的なのではないだろうか。

　高校生が受験というプレッシャーから解き放たれて大学生になった時、「不安」「違和感」を感じることは多いだろう。大学の機能を理解せず（無知がゆえ）に、入学することを目的として大学に進学しているからだろう。
　そうした学生を反映してか、多くのスタディスキルズ本が出版されている。多くは「大学での学び」から、実際に「大学で学ぶために」求められる具体的なスキルをカバーしている。一冊あると役立つが、実際文芸書でもないそうしたハウツー本は、途中で飽きたり、実践で利用しない限りは手に取らない可能性もある。
　それに比べ本書は、大学に入学するにあたって知っておくべき事項と心構えに重点を置いているため、非常にコンパクトである。大学を知り、環境に慣れ、学びの習慣をつけるための32ティップスが、平易なフレーズでまとめられている。１〜２時間で読みきれることができる分量で、筆者の主観的な見解や意見を述べた箇所や体験談もあり、エッセイのように読みやすい。読書が苦手な昨今の若者にもとっつき易いのではないだろうか。
　大学で学ぶための理念と実践から構成される、ハウツー本とは少し違った視点で読むことができる一冊である。入学前に一読し、大学に慣れた頃再び手に取り、本書に書かれているように「批判的に」自分の状況と比べて読むことを勧めたい。

副題は「大学で鍛える思考法」ですが、受験生やすでに大学入学が決まっている高校生、社会人のビジネス書としても一読の価値ありです。
装丁デザインと本のコンパクトさから想像がつかない内容の充実さに「なるほど！そうだよな！そう思っていたのは自分だけじゃない！」とやさしい文体から驚きと自信を与えてくれる一冊です。