この本のレビューでは、若いヘイリーらの大ボケぶりが面白いと、揶揄するようなコメントがあるが、むしろ逆であろう。インタビュアーのヘイリーたちは、初心者からの質問という意味では、なかなか聞けないところを聞いてくれているとも言える訳である。
なかでも「交互に叫ぶ」症例などは、エリクソンの天才的ジョイニングの姿勢を如実に表しているし、「足の大きな女の子」の例では緻密に計画されたように見えた介入が彼ですらその時まで思いつかなかったものである、という告白がなされ、彼が天才というより非常によく患者を観察する人であったということが分かってくる。エリクソンの見事さにため息ばかりつく我々にも、努力の余地が残されていて、どこかほっとさせられる。 また、他にはないエリクソンの自伝も掲載されている。ポリオに侵されつつも果敢に人生を駆け抜けた彼の生涯に多くの人は勇気付けられるはずである。
非常に難しい心理臨床の場で最も難渋する家族療法に対し、これほど新鮮で示唆に富む本はないであろう。心理療法家に限らず、家族のあり方を知るうえでも、また、催眠療法の極意を知る見方からも、お勧めできる書である。