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乱暴と待機 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

価格: ¥596
カテゴリ: 文庫
ブランド: メディアファクトリー
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異常な人間関係を描いた純文学的な作品 ★★★☆☆
復讐のため?に女を拉致・軟禁し、その行為をのぞく男と他人から嫌われることを恐れるあまりすべて受け入れ、疎まれる女の異常な関係。そこにあらたな男女が関わることで均衡が破綻し、この異常な関係の真実があらわになってくる。設定はフランス古典文学にようだが、社会システムには適応できないが人間関係には強度に依存症という現代人の病理を赤裸々に描いている.映画では兄役が浅野で、同僚が山田だが、逆のほうがいい気がする。
“共感できない”のに、泣ける! ★★★★★
本谷有希子の小説はすべて読んでいますが、この『乱暴と待機』は特に好きな作品です。
基本的にはどの作品にも、えてして自意識が甚だしく肥大した、至極めんどくさい、
極力ともだちにはなりたくない人々(特に女)が出てきます。

この作品の主人公・奈々瀬は、人に少しでもイラつかれることを恐れるあまり、
常に人の顔色を伺っては「エヘヘ」と(本当に言葉に出して)愛想笑いしてしまうような、
膀胱が破裂寸前なのに会話の途中で「ちょっとトイレに」と言い出せず失禁してしまうような、
友達の彼氏とも、誘われれば断れず寝てしまうような、これまた何とも生きにくそうな女。
そんな奈々瀬と同居している「お兄ちゃん」こと英則も、非常にややこしい人物で…(笑)

物語は、ある日、天井板の一部がはずれているのを発見した英則が、「妹」こと奈々瀬を天井裏から覗き見ることを思いつく……
というところから始まります。
「これでは変態ではないかっ」と自問・葛藤するも、「ねずみがいるっぽいから、どうにかしなきゃだよね」と奈々瀬が言っていたのを思い出すと「この事態は、あの女(奈々瀬)の自業自得だ」という独自の理論を展開し、サクッと変態の境界を越えます。
そしてさらに読みすすめていくうち、理由は明かされないままにどうやら2人が「復讐する側→兄」「復讐される(復讐を待っている)側→妹」という関係にあることがわかってきます。
しかし、この物語の肝は、じつは復讐の理由にではなく、2人の関係性にあります。
やがて、この2人の(閉じた)世界は、英則の職場の後輩・番上とその彼女・あずさの介入によって、変質していくのですが──

読み手として共感できるのは、しいていえば「あずさ」くらい。「兄」と「妹」の関係は、
さすがにいい歳してこんな奴ら居ないだろうというほどに奇異。
けれども、後半! 二段ベッドの上と下でその「兄」と「妹」が「嘘の会話」をかわすのですが、このシーンは舞台を見た時も、本を何度読み返しても、あまりに切なく、いつも泣けてしまいます。ほんとうに、すばらしい。

「屋根裏から覗き見」という設定から、乱歩の『屋根裏の散歩者』のようと言われることが多いようですが、私は本質的には谷崎の『鍵』のほうが近いのではないかと思います。
あと、装画がヱヴァンゲリヲンの監督・鶴巻和哉なんですよね。かなり乱暴な言い方かもしれませんが、「世界系」ということで言えば、ヱヴァと本作は共通する点があるようにも(少なくとも、私はどちらも大好きな作品です)。

来年の秋くらいに映画が公開されるようですが、「兄」が浅野忠信で、「妹」は美波だそうです(他のキャストは、小池栄子と山田孝之)。
そして、監督は『パンドラの匣』『パビリオン山椒魚』の冨永昌敬!(相対性理論の『地獄先生』PVなども撮っている方ですね)。
個人的には、ものすごく期待大な顔ぶれです。
あの二段ベッドのシーンがどう映像化されるのか、今から楽しみで仕方ありません!!
復讐とは? ★★★☆☆
本谷氏の文章は、勢いがあり、力強さにみなぎっていて、それは時に暴力的であるほど。がしっと、、胸ぐらをつかまれて引きずり出される、そんな感じ。
恐ろしくて、でも、たまらない。その臨場感に、つい舞台を想像してしまう。
小説の迫力、そして、読者の想像力に負けないために彼女がどんな演出をするのか、
俳優たちにどんな演技をさせるのか、この作品は舞台化したらすごいだろうなあ、とさきちは勝手に想像し興奮しながら読んだのでした。

本作品は、英則と奈々瀬の生活を描いたもの。それは、復讐を中心した、奇妙でグロテスクなものだった。英則に復讐されることを望み、自主的に監禁される奈々瀬。決して暴力を振われるわけでもなく、罵られるわけでもない。ただ、英則の命令に従い、
怯えながらご機嫌をとり、表情を隠すため、ダテ眼鏡をかけている。
一方、英則は保健所に勤めている。犬の処分、それが彼の仕事。足をひきずりながら。
そしてある日、英則は天井に、屋根裏に続く“穴”を見つける。

二人に通じるルールは、「お互いの身体に触れない」
それで、どうやって復讐を成しえるのか?
そもそも、その復讐とは、いったい何なのか?

謎めいた二人の関係と、少しずつ明らかにされていく彼らの中心にある「復讐」。
ただ、殴る蹴るといった身体的な損傷だけが暴力ではない。悪気がなくとも
知らぬ間に相手を傷つけていることも、現実世界では往々にしてあるのだ。
そこに、家族とか、愛情とか絡んでくるから、余計ややこしくなるのだ。

そんな、奇妙な読後感を味わいます。ぞくぞくしました。流石、本谷氏だなあ、と感心しながら。短い作品なので手軽に読めます。ただ、奥は深いです。
★★★★☆
゛特異な狂気の沙汰゛でありながら、どこか微笑ましい幼馴染みの繋がりが心地好かったです。キャラクター一人一人の一抹の愁嘆さが滑稽で愛しくて愛着が湧きました(笑) ただ一つ、終盤に英則を車ではねてしまった運転手の心情を察するといたたまれやしないです。
嘘でもいいから繋がりたい ★★★★☆
他者に介入される事のない空間で、女への復讐を考える男と、男からの復讐を待つ女。その1対1の依存が、1対1対1、或いは1対1対1対1という別の繋がりを持ったとき、噛み合っていた歯車は狂いだす。

人間は良くも悪くも、他人に巻き込まれながら、他人を巻き添えにしながら生きていくしかない。しかし、自分の生きる意味まで他人に委ねてはいけない。
果たしてそうだろうか? 少なくとも彼らはそうすることで、互いを見失わない偽りの兄妹関係を築いた。これは単なる愛情や信頼より確かで、より機能的な繋がりを獲得したのではないか。その分、壊れたときの修復は難しい。

主人公2人は痛々しいが、彼らが絶対的に不幸だと思えないからおもしろい。こんな幸せもあるのかと、目から鱗も涙も落ちる。