日本神話を映画にした唯一の作品
★★★★☆
私は右翼ではありませんが、古事記に書いてある神話、すなわち日本神話にはかなりのこだわりがあり、こんなにすごい神話をこの国の人は持っているのに、それを知らない人が多いことを残念に思っていました。その神話をまともに映画にしたのはこの作品だけです。その点でこの映画は貴重です。
この映画は古事記の中の英雄伝説と神話の有名な部分だけをうまくつなぎ合わせてストーリーを作っています。その点ではワーグナーの「指輪」と同じです。3時間という長尺で、演出も平板であるため、「だれる」との意見があるのは理解できますが、なーに、鑑賞するのに四日間もかかる「指輪」と比べるとずっとコンパクトにまとまっていると言えます。DVDで鑑賞するなら、何回かに分けて見れば十分見れます。私はこれを昔、京橋のフィルムセンターで、一気に全部通して見ました。この時はその長さが、大きなイベントに参加したようなボリューム感、満腹感として感じられ、苦痛ではなかったと記憶しています。
さて中身ですが、「古代日本」が驚くほどちゃんと再現されているように思えます。私は古代日本をビジュアル的に見たいものだと思っていましたが、この映画はその点で、十分満足のいくものでした。そして神話の部分の表現は、幻想的に、かつ懐かしさも感じられるように作ってほしいもので、CGを使うような洗練されたものにはしてほしくないものですが、この映画はその点でも満足できるものでした。ミニチュア丸分かりの特撮も、神話や伝説なら全くOKで、その幻想的なビジュアルは実によかったです。スサノヲがオロチを退治する場面だけは、オロチが斬られもしないのにどうしてくたばったのか、わけがわからず、もうちょっと何とかしてほしかったものですが。でも、テナヅチ、アシナヅチが住む高床式の家はなかなか雰囲気がありました。竪穴式住居もちゃんと出てきます。
日本にもこういう古代の神話や英雄伝説があるということを知ってもらうためにも、お祭りの時なんかにこの映画の上映会をやるっていうのはいかかでしょうか。
そして、魂は、高天原へ還る・・・
★★★★★
日本神話、そしてヤマトタケルノミコトのドラマは作られないのかと思っていましたが
半世紀も前に、こんなに素晴らしい映画が作られていたんですね。
ヤマトの国の皇子、オウスノミコトは民に慕われる好漢。
兄を殺した嫌疑をかけられ
異母弟の外戚の大伴氏の陰謀によって熊襲討伐に出陣する。
旅の途中、伯母ヤマト姫の居る伊勢に参り、そこでめぐり合った弟橘姫と恋に落ちるが・・・。
オウスの旅と平行して光に満ちた高天原と
オウスと同じく苦難を続けたスサノヲの物語が語られる。
長い映画ですが演出脚本カメラワーク、音楽、そして名役者さんの演技が素晴らしいです。
ヤマトタケルだけではなく、神々、一兵士や一般市民の描写も素晴らしく
捨てキャラ一切無しの素晴らしさ。
全員自分の生を生ききったドラマとなっています。
衣装考証も見事なら、半世紀前の日本にはまだまだ、原始の日本を髣髴とさせる
原生林や原野が残っていまして、そこでのロケは非常に神代の時代を感じさせました。
戦い一辺倒のオウスは、いつしか、争いのない世界を夢見る。
総てを奪われ、理不尽な仕打ちに耐え、仲間を失いながら。
死ぬ前に、
人が人を裏切ることの無い、
そして力に満ちた明るさと、
おおらかな喜びに満ちた世界を、
ずっと昔の人々が作り上げたことを
だから岩戸神楽の鳴り響く
高天原の神々の心を引き戻せぬはずはない、と・・・。
泣けました。
これは今生きる私たち、日本人に対する遺言でもあるわけですよ。
三船さんのヤマトタケルもカッコいいんですが
田中絹代さんのヤマト姫、原節子さんの天照大神も素敵。
ヤマト姫は老年だけど可憐で気品があり、
天照は圧倒的な美しさと神々しさの中にも可愛い方である。
水野久美さんの健康的な村娘、オウスを慕う姫二人も可憐で美しい。
今、こういう女性キャラクターを演じられる女優さんはもう居ないんでしょうね・・・。
2008年12月に投稿済みのレヴューが未だにアップされず
★★★☆☆
名前だけは知っていながら、なかなか見る機会がなかった映画です。読後感は驚くべき映画という一言につきます。構成は、日本の建国神話と日本武尊(タケル)の遠征がパラレルに進行するという形になっています。神話の世界は、主にスサノオノミコトをタケルが想起する形でフラッシュバックするというつながりになっています。特撮を使って描かれた建国神話の世界は、古事記の古めかしい世界からのイメージ上の脱出を可能ならしめ、神話の持つダイナミックで自由な世界が映像と音(音楽は伊福部昭ですよ)で感じることができます。天照大神が岩に閉じ困るシーンでは、多数の神々が登場し、見事なまでの猥雑でのびのびとして自由な世界が、天宇受女命(なんと乙羽信子)の踊りによって描かれます。もっともタケルの遠征も歴史上の事実ではないわけですが、ここは西国や東国での戦いが中心となるため、特撮とロケでダイナミックに描かれます。三船が演ずるスサノオの大蛇との特撮シーンそして剣のいわれ等の建国神話は、初めて気がつきましたが、このような映像で見てみると、限りなくワーグナーの「指輪」を連想させるものです。そしてタケルやスサノオも三船の豪快なパーソナリティで演じられると、その政治性のなさは、限りなくsiegfriedとの共通点が浮かび上がってきます。もっともタケルの最後の締めくくり方の叙情性は、「指輪」の「神々のたそがれ」のエンディングとは異なる世界観に染められているのはいうまでもありませんが。白鳥が最後に舞い上がるシーンはこの異なる世界観を見事に映像で象徴したものです。もっとも、「やまとは 国のまほろば」はちょっと違うシーンで歌われますが。最後に若干の野暮な政治的な当てこすりをさせていただくと、製作された1959年という時代は意味深なタイミングです。占領が終わったのが1951年そして高度成長が1960年とすると、その間のエアーポケットともいうべき数年の間だったからこそ、おそらくこの後は忘れられてしまうことになる建国神話の映像化が可能だったのでしょう。作品のエンディングの古事記からの逸脱と景行天皇の描き方、そして「話し合い路線」への言及も戦後に解禁された歴史観の反映を見ることも可能です。
三船敏郎が女装!
★★★☆☆
まだ小碓尊の頃の日本武尊(三船敏郎)が、熊襲を討つ場面。
『古事記』にある通り、日本武尊は女装して熊襲の宴にまぎれ込み、隙を見て刺し殺す。
女装した日本武尊(繰り返すが、三船敏郎である)を気に入った、熊襲の兄(すごい鬘と付髭の志村喬)は、自分の隣に座らせ、その顔をまじまじと見ながら、「おお美しい」と言う。
この場面は、黒澤明監督作品でも名高い世界的名優2人をもってしても、いささか無理がありすぎ、苦笑を禁じえない。
熊襲が美しさを愛でて笑顔になっていると言うより、志村喬が自分のセリフに自分で笑ってしまっているように見えてしまうほどの珍場面だと思う。
作品全体も、東宝オールスターキャストの総花的顔見世映画であり、緊張感に乏しい感が否めない。
いっそ、若い世代の皆さんには“三船敏郎が女装する、世にも珍しい場面のある映画”として、トリビアルな話題づくりのためにご覧になる事をオススメしたい。
10歳の頃に観た懐かしい映画です。
★★★★★
団塊の世代と言われている年齢ですが子供の頃観た映画でとても懐かしく購入しましたがそうそうたる方々が出演しているのに改めて驚きました。若い方にはどうなんでしょうか?
やはりおじさん、おばさん向きなのかも?・・・でも良き日本映画で一見の価値があります。
お奨めです。