国際関係論の入門書としては本書の右に出るものはないでしょう。わたくしは第四版を持っていましたがわざわざ第五版を読むために購入しました。内容に大きな変化はないとはいえ、国際関係の変化に迅速に対応し、版を重ねてゆく努力には頭が下がります。
本書の特徴は、何といっても、良質のアメリカの教科書に共通する「初学者でも無理なく、しかも楽しんで読める」ための工夫が満載されていることです。従って、学生のみならず、社会人の方でも通勤途中に無理なく読むことが可能です。
著者は、「徹底的にリアリズム政治学の考え方を叩き込む」ことがこの本の目的だと記していますが、特に第五版では、読み進めるに連れてその姿勢が崩れていき、最後には随分とリベラリズム政治学に傾斜してゆくことにちょっと違和感を覚えました。
よい教科書であることは認めた上で(だから五つ星)ひとつだけ注意しておきたいことがあります。この本には、国際関係論の第三の波である社会構築主義的視点はほとんど登場しません。そういう意味では、むしろ国際関係論の本場であると見なされているアメリカ(と日本)以外の国で盛んである、その見方について別の本で補充しておいたほうがよいと思います。その目的で最適であると思われるのは、進藤栄一「国際関係論」(有斐閣)であると思われます。
進藤教授の本との併読を強くお勧めします。