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文明の衝突

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: 集英社
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日本人はこれを超えられるか? ★★★★☆
新たな視点から、世界の流れを見ている点で、
一読を薦める。
世界人口の、2%にも満たない日本が、欧米、イスラム、インド、中国と並んで、1文明に数えられているのは、
日本人のプライドをくすぐるものではあるが、本当にそうであれば、日本人として、もっとそれを世界に発信する必要はないのか?
最近、日本人の独自性に着目して、それをもっと世界に発信すべしとの論調は見えるが?
Yes とすれば、どうする?
この本の要約 ★★★★★
この本の要約。


歴史上初めて国際政治が多極化し、かつ文明化している。近代化というのは西欧化することではなく、近代化によって何か意味のある普遍的な文明が生み出されるわけではないし、非西欧化社会が西欧化するわけではない。

文明間の勢力の均衡は変化している。相対的な影響力という意味では、西欧は衰えつつある。アジア文明は経済的、軍事的、政治的な力を拡大しつつある。イスラム圏で人口が爆発的に増えた結果、イスラム諸国とその近隣諸国は不安定になっている。そして、非西欧文明は全般的に自分達の文化の価値を再認識しつつある。

文明に根ざした世界秩序が生まれはじめている。類似した文化をもつ社会がたがいに協力しあう。社会をある文明から別の文明に移行させようとする努力は成功しない。そして、国々は自分達の文明の主役、つまり中核となる政府を中心にまとまっていく。

西欧は普遍的な主張のため、しだいに他の文明と衝突するようになり、とくにイスラム諸国や中国との衝突はきわめて深刻である。地域レベルでは、文明の断層線(フォルトライン)における紛争は、主としてイスラム系と非イスラム系とのあいだで「類似する国々の結集」をもたらし、それがより広い範囲でエスカレートする恐れもあるし、それゆえにこうした戦争を食い止めようとして、中核をなす政府が苦心することになるだろう。

西欧が生き残れるかどうかは、自分達の西欧的アイデンティティを再確認しているアメリカ人や西欧人が、自分達の文明は特異であり、普遍的なものではないということを認め、非西欧的社会からの挑戦に備え、結束して、みずからの文明を再建して維持していけるかどうかにかかっている。また、異文明間の世界戦争を避けられるかどうかは、世界の指導者が世界政治の多文明性を理解し、力を合わせてそれを維持しようと努力するかどうかにかかっている。

来るべき時代には文明の衝突こそが世界平和にとって最大の脅威であり、文明にもとづいた国際秩序こそが世界戦争を防ぐ最も確実な安全装置なのである。(最後の一文)
現代を言い当てた予言の書 ★★★★★
英語の勉強にと読んだ本書。政治学の言葉が多くて難しく、途中の中断期間を経て、2年越しでようやく読了。

内容は、ソ連が崩壊し、冷戦構造が終わったこの世界が、今後どうなっていくのかを、世界を主要な9つの文明に分け、その対立構造から見ていくという地政学の本。イスラム圏と西洋文明の対立構造など、本書が書かれた1998年から後に起きた事件を考えてみれば、先を見越した予言の書であったことがよくわかる。

著者は一文明がいたずらに他の文明に介入することを戒めている。西洋文明の中心地たるアメリカはまさにイスラム文明に介入し、泥沼の苦労を味わっている。まさに本書の予言的価値が感じられる現実だ。

さて、扱いは小さいながらも、日本は、中国などと一緒にされず、一個の独立した文明として扱われているのが嬉しい。ただ今後中国の影響下に置かれるのは避けられないとも書かれている。国民感情として、それはどうかな〜とも思うけど。

とにかく、国際政治を見る目が変わること間違いないしの一冊です。
文明の衝突の先 ★★★★☆
1996年にSamuel Huntington氏が世に送り出した「文明の衝突」は 国際関係論に大きな影響を与えました。イデオロギーをベースにした超大国による冷戦体制の終焉にあたり、文明、文化圏をベースにした多元的拮抗体制への移行を予見した著者の洞察には感嘆するばかりです。冷戦終了後、東欧周辺で広まった民族紛争(チェチェン、アゼルバイジャン、アルメニア、クロアチア、セルビア、ボニスア)の解説は彼の論理を支持すると共に時事問題の歴史的背景理解の参考にもなります。大局としては、アジア地域の経済的発展、 イスラム圏の人口増加により、近代化で先行し軍事力を背景に勢力を拡大した西洋の相対的競争力の低下を予想。米国の多文化主義に懐疑的、西洋(ヨーロッパ)の将来は米国の西洋文化へのコミットメントに掛かっていると結論付けます。日本については特異な文明として孤立するリスクを指摘も、揺れる文明(Swing civilizations)としてロシア、インドと共に、今後の三大文明である西洋、中国、イスラムとの連携が鍵と見る。彼の予想は、日本はアジアでの成長を享受するため中国との連携を強め、インドは中国の勢力を牽制するため米国(西洋)との連携を強める。文明の大規模な衝突を回避するため、大国の他文明の紛争介入のリスクを警告。異文化との共通項を探り、相互理解を深めることが普遍的文明の向上に繋がるのではないかと結びます。 共通の利害と価値観を共有して初めて成熟した国際社会が成立する、との指摘。これから、文明間の鍔迫り合いを超えて、地球温暖化や気候変動等の世界的危機を機会に変えられないのか。。。
ネット社会が、文明の垣根を越える? ★★★★★
本のタイトル『文明の衝突』が、僕の中では、かなり一人歩きしているようで、長い間、積読状態であった。
今、40時間かけて、やっと読み終えました。
1096年、キリスト教徒の第1回十字軍の遠征によるイスラム教徒の対立から考えても、1000年の歴史的な長さである。

「資本主義のアメリカ」と「共産主義のソビエト」の東西対立が終焉して、今、文明の衝突が起きていると、サミュエル・ハンチントンは説く。

宗教・言語・生活習慣・社会制度などによって特徴ある文明社会が、世界中の地域で勢力を持つことに寄って、対立が発生しているのが、現代社会である。

先進国による開発援助で発展した開発途上国に対して、天然資源の確保と市場拡大を行なってきた西欧諸国は、その影響力を弱めている矛盾がある。

中国とインドの急速な発展は、21世紀に入って、勢力地図の歴史的な転換点を迎えようとしている。

p118 西欧はその地位を築くまでに四〇〇年という時間を要した。衰退には、同じだけの時間がかかることだろう。
(中略)「世界的に、国際社会におけるヨーロッパあるいは西欧の支配は、一九〇〇年ごろにその頂点に達したといえるかも知れない」

日本のことにも、かなり多くのことが触れられているのが、印象的だった。
アメリカと中国の間で、日本の役割が、未来に大きな影響力を持っているからのように思える。

p494 平和と文明の将来は世界の主要文明の政治的、精神的、知的指導者たちの理解と協力いかんにかかっている。

インターネットの世界的な普及は、文明の垣根を越える可能性がある。
「宗教と言語と国境」から規定されている文明社会を、「ネットと音楽とファーストフード」が、新しい統一社会の精神的な基盤に、ゆるやかに影響しないだろうか。

p497 ベンジャミン・バーバーの『ジハード対マックワールド』では、通信や情報や娯楽が世界を一つにし、市場経済がグローバル化したと論じられている。

ハンチントンは、「西欧は、世界に普遍主義を求めるより、それぞれの文明を認めた社会を目指すべきだ」と繰り返し説いている。
人類の歴史が、対立の歴史でもあったことを考えると、人類が平和に生き残る指針として『文明の衝突』は、素晴らしい1冊である。