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引き裂かれる世界

価格: ¥1,890
カテゴリ: 単行本
ブランド: ダイヤモンド社
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 「民主主義、ファシズム、社会主義、共産主義といったイデオロギーは、もはや世界を分かつ存在ではない」。代わって世界は「西欧、ヒンドゥ、儒教、日本、ラテン・アメリカ、東方正教会、イスラム」の8つの文明に分かれ、それぞれにアイデンティティーを求めて衝突していく。ハンチントンが「文明の衝突」でこう予測したとおり、イスラム文明と西欧(すなわちキリスト教文明)の衝突は、まさに「9.11」で先鋭的に出現した。この大規模衝突以後の世界を「一極・多極」として俯瞰(ふかん)したのが本書である。

   一極は超大国アメリカ、多極は主要地域大国(欧州のドイツ・フランス、ユーラシアのロシア、東アジアの中国、西アジアのイラン、南アジアのインド、中東のイスラエル)、No.2地域大国(イギリス、ウクライナ、日本、パキスタン、サウジアラビア、エジプト)、その他の国々、という構図である。中心の超大国は主要地域大国から、主要地域大国は No.2地域大国から、No.2地域大国はその他の周辺諸国から、それぞれが絶えず圧迫を受けている。この下位からの圧迫をかわすために、アメリカはイギリス、日本などの地域大国と、主要地域大国は最下部の諸国との友好関係を図ろうとする。ハンチントンは、従来の「同盟」では説明できない複雑な国家関係の現実を、このような図式でとらえるのである。もちろん、友好関係の土台になるのは共通の文明・文化である。

   確かに「9.11」は複雑な国家関係をイスラム過激派対「反テロ」同盟にすっきり二分する効果をもたらした。ハンチントンはこれを「初めての世界大戦」という言葉で説明する。しかし、アフガニスタンで成功したアメリカは次第に「同盟国などあってもなくてもいい」という思い込みを強めはじめている。そこに反テロ同盟のタガをはじけさせる危険性が潜んでいる。そういいながらハンチントンは、日本が自国の安全保障を確保するには、アメリカとの同盟関係を選択するべきだと暗に勧めるのである。

   最後のところで、著者自ら「私はさしずめ『俯瞰図の男』と言えるだろう」と評しているが、「俯瞰」には文明の重層部を透視できないうらみがある。8つの文明のひとつを「日本」としているように、ハンチントンも「日本」には若干てこずっているかにみえる。ヨーロッパの文明を「罪の文化」、日本の文明を「恥の文化」というのは、明らかに「ルース・ベネディクト」的に古風であり、このあたりの皮相さが本書の弱点といえるのではないか。(伊藤延司)

ハンチントンの自伝的書 ★★★★☆
 この本は、「文明の衝突」に対する批判などについて、ハンチントンが反論などをしている本です。しかし、この本をよく読むと、ハンチントン自身の自伝的なストーリーが出てきます。おそらく、ハンチントンも「文明の衝突」でイスラムをアメリカの新たな敵として描き出したことについて、良心の呵責などを感じたのではないかと思える部分もでてきます。また、日本に対するメッセージもあり、日本がどのように国際政治を考えるかについてヒントになっています。ただ、歯切れのわるい本ですので、ある程度、「文明の衝突」の裏事情をわかっていないと意味のない本かもしれません。
大雑把で疑問を感じる ★★★☆☆
以前にどの本だったか忘れたが、E.Saidがハンチントンを批判していたので興味があった。前半は、アラブを中心とするイスラム文化圏と9.11以降のアメリカとの関係、後半は日本のことに付いて書いてある。
本書で扱われている重要な概念「引き裂かれる」の概念とは、その国特有の分化、特に国民の大多数が占める宗教と政治の指導者の行く方向がその宗教の固有の考えと一致しない場合を考えているようだ。例えば、アタ・トュルクの率いていたトルコはイスラム文化圏でありながら、アラビア文字を廃止し宗教の自由を見とめ西欧文化をとり入れたし、明治維新の日本は仏教や神道が持つ独自の世界観に対し欧米文化をとり入れて成功した類である。このような状態を、「引き裂かれる」と表現している。
読み始めてSaidがなぜハンチントンを批判しているのか分からなかった。しかし読み始めていくうちに、Saidが取り上げている批判とは違った形での疑問が浮かんできた。
というのは、宗教の中でも宗派によって大きくその傾向が異なるからである。例えばキリスト教文化圏と言っても、オーソドクス系は多神教に近い発想であるし、プロテスタントでも議会派長老派、バプテストと傾向が全く違うからである。イスラムでも原理主義に近いのはワッハーブ派であり、これはハンチントンも認めているところである。
しかし、それぞれの宗派と社会階層は微妙に関係がある。教義に厳しいのは社会階層が低い傾向があり、ゆるいものほど上流階級の傾向がある。これは経済的な状況とも関係があり、宗派を考えずに宗教単位で考えるのはナンセンスであろう。
例えば、ダボス会議に出席する人たちは西欧の考えを身につけており・・・云々とあるがそれを西欧といって良いのかという疑問が出てくる。あの会議に出席する人たちは、上流階級でありいわゆる経済的発展を遂げている国出身が多いだろう。その点を考慮しないで、「引き裂かれる」とする概念を使って言いものだろうか。
特に後半の日本に関する記述は、論理立てがかなり大雑把で疑問を感じるところが多い。
必要なのは「俯瞰図」ではなく「下からの視点」では? ★★☆☆☆
どうもよく分からない本である。冒頭にて「文明の衝突」は避けられるということを主張することが本書の目的であるとしながら、議論が散漫で全体の構成に筋が通っていないし、処方箋が明確に見えてこない。

著者は文明間の対立は各文明を代表する主要国間の交渉で解決できるとしているが、その処方箋には首を傾げざるをえない。著者自身も指摘するように、イスラム文明には中核国は存在しない(第一章)。また、またイスラム原理主義が人口激増と近代化の矛盾の受け皿になっているという現状がある(第四章)。すなわち多くの若者が原理主義に惹きつけられる土壌があるというのである。著者の処方箋が機能する基盤そのものが存在しないことが著者自身によって明らかにされてしまっているのである。

その後の章では「平和維持活動」としての対テロ戦争が論じられているがこの部分にも疑問を抱かざるを得ない。著者や米国にとっての「平和維持活動」は、アフガンやイラクなどで「付随的犠牲」となる一般の人々にとってどう認識されるだろうか。皮肉にも、「対テロ戦争」の5年間で世界のテロ発生数は激増した。そのことの意味をもっと考えていくべきではないだろうか。「文明」を装った「抑圧」、「平和維持」を語った「暴力」に対する普通の人々の怒りと悲しみがそこにはあるのである。

著者は自らを「俯瞰図の男」と称しているが、現代の世界が抱えている危機(=「文明の衝突」)の本質を見極めるには、求められるのは「俯瞰」することではなく、「普通の人々」に対する「抑圧の構造」を直視し、彼らの怒りと悲しみに向き合うことではないだろうか。しばしば批判されることであるが、国際政治学の理論には「人間」が見えない。「人間」を見ない理論に導かれた外交政策こそが、「文明の衝突」を招くのではないか。今求められているのはまさに「下からの視点」である。
妥当な現状分析 ★★★★☆
 「文明の衝突」の問題は、理念型の呈示には成功しているものの、その理論を使った現状分析と未来予測に若干難がある点であった。その点、この本の分析は「文明の衝突」よりも妥当であり、あの本を補うものとしては勧められる。
 ただ、他のレビューアの方の意見にもある通り、この本の分析はあくまで一面的であり、冷戦期に活躍したネオ・リアリズム政治学者のそれであることは注意が必要だろう。
 そのことをあらかじめ頭に入れておければ、悪書ではないと思われる。
この著者だから読んでおくべし ★★★★☆
様々な話題を呼んだ「文明の衝突」の著者が9.11以降を解説したもの。
文明の衝突理論に基づいて、理論の実例を固めている。
社会論・世界論は「なるほど、そう言いたければ言えるよね」という風になるのが当然で
(今、ここのことで、終わってないから)
様々な象徴的な事例を挙げて、なるべく多くを説明できれば
優秀な理論ということになると思うのだが、

その意味でなかなかちゃんと説明できるなと感心する。
この本は、そういった検証をしながら読むのが良い読み方だと思うので、
本書を読む前に「文明の衝突と21世紀の日本」を
読んでおかれることをお勧めします。