狂犬の異名を持つロイ（ハンフリー・ボガート）は特赦で8年ぶりに出所するが、最後の仕事の覚悟で昔の仲間たちとともにホテル強盗をしでかした。すぐさま指名手配される羽目となった彼は、自分に惹かれるワケあり女マリー（アイダ・ルピノ）を連れて逃亡の旅に出るが、やがて“ハイ・シェラ（高い山）”ホィットニー山へと追い詰められていく…。
   それまで悪役専門だったハンフリー・ボガートの初主演映画であり、出世作ともなった犯罪映画の秀作。ただし製作年が日米開戦とぶつかったこともあり、正式な日本劇場公開は1988年（それ以前にテレビ放映はあり）と大幅に遅れた。脚本をジョン・ヒューストンが担当しており、この後彼はボギー主演『マルタの鷹』で監督デビューを果たすことになる。また、監督の名匠ラオール・ウォルシュは、後に本作の西部劇リメイク『死の谷』を発表するなど、さまざまな映画人の転機となった記念的作品でもある。（的田也寸志）