Boy
価格: ¥1,053
1980年のデビュー時のU2には、バンドが将来世界を制することを思わせる要素はほとんど見あたらなかった。実際、本作にあるのは野暮ったいかもしれないが魅力的な、成人したばかりのバンドの切迫感だった。そうしたナンバー「I Will Follow」、「Stories for Boys」、「Out of Control」は、現在の大げさで芝居がかったスタジアムバンドのU2に慣れ親しんだリスナーには驚きかもしれない。ボノの視点は、まだじれったいほど曖昧で素朴で、その鼻につくほど議論好きの傾向がまだ目立っていないことは明らかだ。ボノの聖歌のごとき切望感に満ちたナンバーは、世の中に嫌気のさした億万長者のものではなく、10代を終えたばかりのダブリンっ子のものである。
バンドがかいま見せる音楽的な不安定さも、プロデューサーのスティーブ・リリーホワイトによって当時新鮮だったニューウェーブ風に丹念に磨き上げられ、本作では有利に働いている。エッジのエフェクトを多用した濃密なギターワークは今から見ればあまりにありきたりに聴こえるしれない。けれども、それはその効果をあからさまに用いた本作こそが80年代のロックシーン全体に重要な影響を与え、その技法を世に広めたからである。『October』のようなムードや音楽的完成度はないが、本作は依然としてU2のアルバムの最高の1枚に数えられる。(Jerry McCulley, Amazon.com)