今作は彼のもうひとつの偉大なクインテットの2作目(1作目は『ESP』)。マイルス(トランペット)、ウェイン・ショーター(テナー・サックス)、ロン・カーター(ベース)、トニー・ウィリアムス(ドラム)、ハービー・ハンコック(ピアノ)というラインアップだ。このクインテットは1960年代後半に4枚の傑作をColumbiaに残した(残りの2枚は『Sorcerer』と『Nefertiti』)。いずれも必聴盤だが、『Miles Smiles』が最高の出来と言っていい。ショーター作の曲が多く、ウィリアムスの激しいドラムに乗って、マイルスは抽象的な音楽とブルースを融合させている。そしてジャズ界最高のベーシスト、ピアニストも脇を固めた『Miles Smiles』は、情熱的かつ思索的な作品に仕上がっている。マイルスが「エレクトリック」に転向する前の最後の作品のひとつであり、ロックの要素も取り込んでいる。しかし当時のアバンギャルド的な作品とは一線を画し、きちんと曲の構成を意識した作りになっている。その結果、マイルスにとってだけではなく、ジャズ史における傑作アルバムの1枚となったわけだ。(Phil Brett, Amazon.co.uk)