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Emma's Rug

価格: ¥663
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Sandpiper
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   エマはまだ幼女だが、早くも絵の才能を発揮していた。その彼女の創造の「泉」は、不思議なことになんの変哲もない白い敷物にある。白い敷物を見つめていると、絵が浮かんでくる。彼女にとって絵を描くということは、その敷物に浮かんだイメージをただ紙に描き写すことだった。才能は、もしかしたら、ただ肉体を必要としているだけで、その肉体は偶然選ばれるだけなのかもしれない。ここではエマが選ばれ、エマに乗り移った才能がエマを通して表現される。エマは才能の操り人形、肉体としてのエマが賞賛されても、実はエマの幸運に対する賞賛なのだ。才能あることを、「gifted」とも言うが、エマは文字どおりその白い敷物を贈り物にもらって絵を描きだしたのだった。

   ところがある日、お母さんがその敷物を洗ってしまった。作者はなかなか、楽しいメタファーを思いついたものだ。才能を「洗濯」してしまうとどうなるか。才能はみんな落っこちてしまった! 世の中には、幼くして天才といわれ、その後どこかへ消えてしまった人たちが大勢いるが、みんな「洗濯」のせいだったのか。天才として特別扱いされた人からその才能を取ってしまうと、「ただの人」か、えてして多くは、常識がなかったり独善的だったり、いわば普通以下だったりもする。エマは幼稚園で、扱い難い子になってしまった。

   敷物の洗濯後、からっぽになってしまったエマに、しばらくして変化が訪れた。敷物がないのに、イメージが浮かんでくる。どこにいても、どこからでもそれはわいてくる。創造の源、白い敷物がその隠喩だったわけだが、今、エマはまだそれがあることに気づいた。そしてその場所は幸運なことに、彼女自身の中だった。

   才能の有無の見きわめは難しい。でも、本物は「洗濯」しても、よみがえる。これを作者の優しいメッセージと取るか、厳しいメッセージと取るか。(おおしま英美)