ボキャブラリーテスティングの分野で日本の第一人者である望月正道氏が語彙についての概要とテストを,同じくコーパス研究のトップ投野由紀夫氏がコーパスについて,分かりやすく解説している.これらの分野の権威ならではの内容に仕上がっている.
そして「指導マニュアル」と銘打つ本書の中核をなすのは,新進気鋭の英語教育学者相澤一美氏によって書かれた「第4章 単語はどう教えたらよいのか」である.私はここが一番読む価値があると思っている.教科書を用いた指導を念頭に,どの語彙を指導するか,どのように導入し,定着,発展させるか,具体的な指導案を立てて紹介されている.なにより素晴らしいのは,その提案は日常の授業の中で無理なく生かせるものであるということだ.全く生かせないのであればその教師に問題があろう.
さらに,若干ではあるが電子辞書の有効性の検討にも紙面を割いている.また,カタカナ英語を利用した語彙学習なども面白い.
世界中で行なわれている語彙研究の主流にのった,基本をしっかり押さえた本である.その意味で情報の信頼性は高い.教師が読むには最適の語彙入門書であろう.語彙研究に関心のある学生が読むのなら,投野氏や相澤氏らの『英語語彙習得論』をお薦めする.