1994年の発売以降、多くの賞を受賞し、舞台化、イタリア語版の発行、ビデオ紙芝居の発売、さらには小学校4年生の国語の教科書に採用されるなど、多くの反響を呼んだ「あらしのよるに」。そのシリーズ第5部となる本書では、「食うもの」と「食われるもの」の秘密の友情が大きな岐路に立たされる。
あらしのよるに、お互いが誰かもわからぬまま意気投合したヤギのメイとオオカミのガブ。「ひみつのともだち」になった2匹の関係も秘密ではなくなるときがやってきた。せめたてる仲間たち。そして、仲間にもどるために、相手の動きを探るべくガブとメイはもう一度谷川で会う約束をする。
「ここまできたら、いくところまでいってみますか。」
しかし、2匹が選んだのは、仲間を裏切ることだった。ひらがなとカタカナでかかれた簡潔な文章は、もちろん子どもを意識して書かれてはいるものの、この種を超えた友情の物語はすでに児童書の枠を超えている。(小山由絵)