火事で焼け出されて越してきたアパートで、「わたし」も母さんもおばあちゃんも、とても大きなガラスびんに小銭をためはじめました。いつかお金がたまったら、「すごくふわふわで、すごくきれいで、すごく大きい」「バラのもようがついたビロード」の椅子を買おうと、みんなでがんばっているのです……。
　大きな不幸にもめげず、女三世代で元気に暮らしている家族の物語。絵本の設定としては痛いくらいにリアルですが、佐野さんの抑えた訳文と、みんなのけなげさと明るい暮らしぶりに、知っている人の話を聞いているように、応援したくなってしまいます。ついにお金がたまったときには、よかったねと喜びつつも、本当に椅子が買えるの？　夢見た椅子はこの世にあるの？　そう真剣に心配してしまいました。
　椅子は、毎日の暮らしに少しのうるおいと希望をもたらしてくれる存在。それがバラ模様だなんて、本当にすてき。読み聞かせには少々長いけれど、一生懸命生きていればきっと夢はかなうという、大切でまっとうなことを教えてくれる、感動的な本だと思います。

おばあちゃん、お母さん、女の子が明るく屈託なく仲良く暮らしています。飾ることなく、贅沢もせず、でもとても明るくて温かい家族です。淡々として何気ない文章なのに暖かい不思議な魅力を持った本です。続編の「ほんとにほんとにほしいもの」と共にお薦めしたい絵本です。

この本は字数も多く、子供によんであげるには、お母さんがつかれてしまうかも知れない。絵も子供のかく水彩画のようで、今人気がある絵本の風潮とは少しずれるかもしれない。しかし、思い出してほしい。自分が子供のころ好きだった本を思い出すと、どうしてかはよく分からないけど、なぜかこの本に執着していた、、といえる「宝物」のような本が一冊はあるだろう。この本は（特に女の子におすすめ）そんな「宝物」になりうる可能性がある良本です。ちなみに私はこの本を、２歳の子供と一緒に読んでいますが、子供もこの本に独特の世界観を見い出したようで、大のお気に入りです。なんてことはない話なんですがね、、なぜかわたしも虜です