絵本版3D作品。
★★★★★
秋田の八郎潟にまつわる伝承をもとにしたお話。
お話も秋田弁で書かれているため、読みやすいものではないでしょう。
でも、このお話はもの凄いです。
絵のインパクト。
言葉のインパクト。
まるで3Dで映画「アバター」を見ているかのようなもの凄い迫力で迫り来ます。
これほど力を感じさせてくれる作品も少ない。
八郎という大男とが主人公なのですが、絵の中という小さな世界のことなのに、そんなことはわかっているのに、その「大きさ」に驚愕します。
アートが持つ力を感じずにはいられない力強い作品です。
忘れていた「一途さ」
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「わがった〜 こうして大きくなって、皆の役にたちたがったんだ〜 んでねが、わらしこ!」
山男の八郎が自分の使命を悟って海と対峙するクライマックスには、何度読んでも涙があふれる。
この絵本に出会ったのは私が小学1年生の頃だったと思う。男鹿に住んでいた頃で八郎潟も寒風山も日々の風景だった。教師になり最初に教えた子供達の教科書で再会したのが20年前。小学3年生には心情理解は難しいかなと思われたが、ダイナミックなイラストにも支えられた。娘に読み聞かせたのが10年前。一昨年には甥の幼稚園入園のプレゼントに。良い作品は世代を越えて読み継いでもらいたいものです。
今、一途な気持ちが忘れられている! 「広く浅く」と知識も人間関係も希薄になる傾向は人間の危機です。こんな時代だからこそ、八郎が蘇るのでしょう。
子供の頃は本当に大きな山男だったから皆を守れたと考えていましたが、大人になって読み返すと、人間八郎が見えてきます。弱いからこそ、大きくなりたいと精進を重ねる。そして何のために大きくなったのかと迷う日々。優れた技能をもてあます熟年は八郎と同じだと思うのです。村の仲間や小さな命を愛する時、願いや希望が凝縮されてとてつもない力を発揮する。そう、立ち上がれ熟年! 色々な読みができる文学の息の長さ、奥深さに改めて驚かされます。
いつか孫にも八郎を読み聞かせ、寒風山から日本海を眺めてみたいなと思う日々です。
私の中ではオールカラーでした
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この本との出会いは小学校2年生の時。小児歯科の待合室でした。
「こんな本がこの世にあるのか」というようなすごい衝撃を受けた覚えがあります。治療前なのに号泣し、しばらくその歯医者に行くたびにこの本を読んでいました。
それから数十年。大人になってふと買ってみたこの本を見て…「あれっ、カラーじゃなかったの?!」…そういう例があることは知っていました。子供の時に読んだ絵本が印象が強かった場合、記憶の中で彩色されてしまうことがあるという…。
しかし自分自身で体験していたとは。今でも白黒の絵を見ると違和感があるほどです。
つい個人的な体験ばかり書いてしまいましたが、とにかく強力な、心に響く絵本です。
ただ、それだけに、よみきかせするよりは一人静かに向かい合った方が力を発揮するように思います。なので、おすすめは小学校中学年くらいから。
この本が気に入った方は、「三コ」と「花さき山」もぜひ。
私も、この世界にはまってしまいそうです。
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斎藤隆介さんと滝平二郎さんのコラボ作品としては、「モチモチの木」が一番有名でしょうか?私は、「花さき山」に惚れて、次にこの「八郎」を選びました。
他の方も書いていらっしゃる通り、言葉はかなりきつい秋田弁(馴染みがないのでよく知りませんが)らしいので、読み手(音読)は練習を要しますが、それだけに、”読み聞かせ”の醍醐味がある様にも思えます。聞き手の方は、最初はわかるようなわからないような、迫力のある絵に惹きつけられながら、心地よい方言が子守唄のようでもあり・・・という感じで、ついつい眠りに吸い込まれる・・・というパターンで、2週間くらい毎夜読まされました。
いろいろなタイプの絵本を買ってやりたいと考えていますが、同じ千円前後の価格でも中身の濃さは様々だなぁと感じました。お勧めです。
詩情あふれる絵本
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壮大なスケールで、大男八郎の活躍を描いた昔話。滝平二郎の美しい挿絵、秋田弁の素朴な語り口の織り成すハーモニーがすばらしい。おおきなおおきな八郎の頭のまわりを小鳥たちが「ぴちぴち、ちいちい、ちゅくちゅく、かっこー」と飛び回る様を想像するだけで、なんだか豊かな気持ちになります。いつまでも手元に置いておきたい一冊です。