それで”文化祭事件”のポイントは-というと、これがよくわからない。ただ、童話作家の新谷さんという人の存在が実に気になります。子供のころ、はまだひろすけという作家の書いた、”泣いた赤鬼”を読んで、この道を志した、という新谷さん。”泣いた赤鬼”―まさに日本児童文学の傑作ですが、そういった作品を目指して書き続ける新谷さんは一向に世に受け入れられません。”泣いた赤鬼”のような純粋無垢な作品は、もう、今の時代にはあわないのか。児童文学といえども時流に迎合したものを書かねば生きていけないのか。なんとなく、この辺に原作者、那須正幹先生の理想と現実の葛藤を見てしまうのは深読みのしすぎでしょうか?
とにかく新谷さんは三人組の巻き起こした文化祭事件によって、己のプライドと信念をメチャクチャに踏みにじられます。そして心配になってたずねて来た宅和先生(名脇役!特にこの作品での活躍が光ります)と大喧嘩をした後、何かを悟ったようです。自分が一方的に子供に期待するイメージを書くのではなく、現実の子供相手に体験したことを書いた新作、題して”ズッコケ文化祭事件”が世にでることになったのです。(ここら辺がなんともニクイ)
とにかくこの作品と、上にあげた2作品は子供達だけでなく、大人の方にもご一読をお勧めします。児童作家というものは、大体自分のナマの心情を作品にストレートにのべたりはしないと思うのですが、この3作からは、作者の熱いハートが伝わってきます。
なお、この作品で、新キャラクター徳大寺君が登場しますが、以前NHKで放送されたドラマ版では、なぜか、彼の役どころを"児童会長"で重要な役を演じる皆本君がとってしまっていたのはナゼ?