身近なものを題材にしていらっしゃるからでしょうか。描写がとても自然で、現実感があります。もし私が現役小学生だったのなら、読み終わったあと「自分の周りでも何か不思議なことが起こってるのかも……」と、こっそり百葉箱を見に行ったりしていたかもしれません。
大人が読むと、きっと懐かしさに頬がゆるみます。
子どもの頃流行ったオモチャや歌が出てくる、といったことではなくて、子ども時代の、感情の動きを思い出すというか追体験してしまうというか。「ああ、うん。そうだった」と、やさしい気持ちが込み上げてくるのです。
オトナがコドモ向けに書いた、コドモの気持ち……という感じがしないのです。素晴らしいと思います。
岡田淳さんの書かれるお話は、『こそあどの森』シリーズのような、まったくのファンタジーも面白いです。
けれども、小学生をとりまく日常から、ちょっとだけ離れたところにある「不思議な出来事」を見せてくれる、この本や、『二分間の冒険』『扉のむこうの物語』など作品に、より強い魅力を感じます。