戦争が起こり、ひとりぼっちになってしまったぼうや。おとうさん、おかあさんを探しておびえながら街をさまようが、なによりも今、したいのは…「おしっこ!」。右のほうへも左のほうへも、塀の上からふりそそぐおしっこ。すると「ぱっと すべてが とまり」、やがて人々の笑い声が響き渡る…。
戦争を止めたのは、小さなぼうやの「おしっこ」。一見、拍子抜けするほどユーモラスな解決法だ。だが何度か読むうちに、戦争という逼迫した状況下にあっても「おしっこがしたい」というごく当たり前の衝動が沸く、子どもの生命力に人々が心動かされたようにも見えてくる。
筆の跡を生かした自由な色使いの絵と、大きな文字や曲がりくねった配置の文章など、ページ構成も大胆でおもしろい。やさしくほほえむお母さん、不敵な笑いを浮かべる兵士たちといった人々の表情も、単純ながら生き生きと描かれている。(門倉紫麻)