開拓時代の大草原を舞台に、姉娘アンナの視点で「家族になること」をやさしく丁寧に描いた1冊である。ストーリーはあくまでシンプルで短いものだ。しかし、描かれる子どもたちの気持ちや、人物、景色は鮮やかな映像として見えるように生き生きと描かれ、そこに読者は大きなドラマをみるだろう。
1985年にアメリカで出版された本書は、アメリカのすぐれた児童文学に与えられる第66回ニューベリー賞、第3回スコット・オデール賞を受賞。続編として『草原のサラ』が出版され、テレビ映画化もされた作品である。日本では1度絶版になったものの再出版を求める声にこたえて、出版社を変えての刊行となったという。
中村悦子が描く日本版の挿絵は繊細で優しく、本書の世界観を盛り上げるのに一役買っている。丁寧に子どもたちの気持ちを拾い上げ、読むものの気持ちをやさしく揺さぶる本書は、子どもたちだけのものにしておくにはもったいない。家族そろって、「家族とはなにか」ということを考えてみたくなる1冊である。(小山由絵)