映像の暴力性にこだわりつづける石井聰亙監督が1984年の『逆噴射家族』以来10年ぶりに撮った長編映画ということで、ファンの間で大いに話題となった作品。しかしここで彼は肉体の暴力ではなく、マインドコントロールを一例とした精神の暴力へとその観点を移し、そこから愛やサスペンスを醸し出すとともに、超自然的なものへの畏敬の念をじわじわと噴出させていく。ヒロインの家の中にある緑の植物までもが暴動を起こしそうな、静かなる映像の迫力を堪能できる異色作である。(的田也寸志)