偉大な名作へのオマージュ
★★★★★
ドン・キホーテは生きている。もちろん、それはスペイン語の文化においてという意味である。例えば数年前のDELE(外国語としてのスペイン語試験)にドン・キホーテの文章が(おそらく原文のままで)使われていた。外国人向けの日本語試験で400年前の文学作品が出題されることがあろうか?!
もちろん、原文そのままでは特にスペイン語が母語でない者にとってはかなり難しい。本書は、文学史上に輝く原作のハイライト部分をやさしいスペイン語に書き直して、対訳と簡単な注を付したものである。最後には「名文集」として少し詳しい解説がある。スペイン語のレベルとしては文法事項を一通り終えていれば、辞書を使いながら解釈ができる程度であろう。中級者だったら1ページで辞書を見るのは数回で済むだろう。
原作の香りがどの程度まで表現できているかは評者には判断しかねるが、こなれた訳を読んで楽しむといったことでも良いだろう。
著者は端書きで「私がセルバンテスの傑作を冒とくし,粉々にしたであろうことは重々承知しています。」と書いているが、当然これは謙遜で、本書は偉大な名作へのすばらしいオマージュとなっている。