この「日本残酷物語」は、オヤジの世代ではなく、そのまたオヤジ、またオヤジ、またまたオヤジ・・・くらいの時代のものです。残酷が現実、正真正銘の現実の生活だった時代の事柄です。
一時期流行したグリム童話等の怖い話などというのも、辿っていくとこうした現実に行き着くのではないかと思います。この書籍の中で取り上げられているのは、ドロドロした現実の上澄みだけを掬い取った「お話し:物語」ではなく、ドロドロした現実そのものです。怖いお話しよりなお怖いと思います。でも、それが紛う方無い現実で、自分の親の親の親の・・何某かは、そうした時代を見て、実際に暮らし、生を終え、自分たちに世代を譲ってきたのです。この本を読むとなにかそうした世代の連なり、時代の移り変わりの中に漂っている小さな自分に気づかされるような気もいたします。
この本の編集者の一人に人情の機微に通じた小説家山本周五郎が名を連ねているのは興味深く、また、なるほどという気がいたします。どうぞ是非ご覧になってみてください。へたな小説を百読むよりも得られるものは大きいと思いますので・・
(私のお奨めは,比較的明るい「残酷物語」:「飛騨の乞食」の「仏の福松」です。)