“ポル・ポト”の悲劇を繰り返さないために
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今から約30年前、カンボジアで起こった犠牲者数百万といわれるジェノサイド(大量虐殺)。前著「カンボジアノートT」でアンコールワットをテーマに選んだ著者は、必然的にポル・ポトを次の題材に選んだ。
「自分の思考は細部によって成り立っている」と述べる著者だけに、キリング・フィールドの地をたんねんに歩き、関係者に緻密な取材を重ねる。まるでジグソーパズルをひとつひとつ組み立てるように、そうした作業を通じてポル・ポトの時代の全体像を浮かび上がらせることに成功している。あの時代は決して過去の出来事ではない。過去を正確に知ることなくして、未来の悲劇を避けることはできない。愚かな歴史を繰り返さないためにも、ぜひご一読願いたい。