自分の手にも、その贈物が残されているのか、私には分からなかった。どこを探せば良いのかも分からなかったし、なにを探しているのかすらも分かっていなかった。しかし、なにか大切なものを求める旅に出たのだな、ということには気付いていた。
From the Publisher
母親もなく、身寄りもないシルヴァーは、ラス岬の灯台守、怪しげなミスター・ピューの下に。切望に導かれた放浪の話、万物を結ぶものの話、誰の人生にも起こりうる転落の話、ピューはそんな話をシルヴァーに聞かせる。19世紀の聖職者、バベル・ダークの人生を聞いたとき、シルヴァーの前に一筋の道が開ける。
暗黒を抱えるシルヴァーも、愛と喪失、情熱と切望、そんなものに彩られた終わりのない旅に出ることになるのだ。そしてやがて、それらを裏切るかのごとく、虚しい終着点へと辿り着く。しかし最後に見えるのは…。
「愛しています。それがこの世で最も困難なことであったとしても、ほかになにが言えるというのですか?」
ダーウィンやスティーブンソン、我々のなかに住むジキルとハイド、鳥たちの言葉や失われた書物、この不確実な世界のなかで、『Lighthousekeeping』は、我々の密やかな居場所へと続く道を、照らし出してくれる。
ジャネット・ウィンターソンは、世代を代表する独創性に満ちた作家であり、本書を、そんな彼女の最高傑作と呼んでも良いだろう。