このタイトルでビジネス書、となれば磐石な経営実績がなければ説得力を持たないが、著者は京大理学部時代に現・堀場製作所の前身を設立。ベンチャービジネスの草分け的存在でもある。「牛後よりも鶏口を目ざす人」「ズケズケものを言う人」「独断で仕事をする人」「ちょっとの成功では満足しない人」と、アグレッシブな人を“できる”人に、「石橋を叩いてわたる人」「敵が少ない人」「その場を丸く収めようとする人」など和を尊び対立を避けるタイプをバッサリと斬るのも過去の経験あってのこと。本書の中に「社員として伸びるかどうかの正念場」である三十代への警鐘が含まれている点も興味深い。体力も希望もあって、個人として最高に脂がのった時期であるはずの三十代に最近活力が見られない、という。その原因を「たえず競争にさらされ、ガムシャラに生き抜いてきた上司を見て、ほかにもっと楽な生き方があるのではないかと思っているあいだに三十代になったのではないか」と分析。「三十代の社員はうかうかしていると後輩に足をさらわれることになる」という著者の予見にギクリとしたら、ぜひ一読をお勧めする。(松浦恭子)