写楽は写楽
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写楽が阿波藩お抱えの能役者斎藤十郎兵衛だったということは、いまやほぼ100パーセント近く確実なのですが、「写楽実はだれそれ説」というのはまだ跡を絶たないのでしょうか。擬似学問ごっこをしたい素人が多いということかもしれませんね。しかし近年また、「写楽は北斎だ」という何番煎じかのアイディアの本を出したのは、大学の美術史の先生だそうで。写楽と北斎との違いもわからないで、御商売はだいじょうぶなのでしょうか。
こちらの本は、ちゃんとした浮世絵の専門家が書いた、最も安価で良質の1冊です。図版をながめて簡潔で的確な解説と本文を読めば、ほかのだれでもないこの浮世絵師の個性がよくわかります。