著者と画伯の不思議な素晴らしい関係
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著者ははじめにこの本を出すきっかけが家の改築に伴う写真の整理であったことを律儀に打ち明けているが、梅原画伯が亡くなって1年後に出版されたのだから追悼の意味が込められていることは、最初が梅原画伯の仏壇コーナーから始まることでも十分伝わってくる。著者は「誰に、どう言われても、私はかたくなにお通夜に行かず、お葬式にも行かず、いまだにお墓へも行っていない。お墓へ行ってしまえば、梅原先生の死が確実になってしまうから、私は行かない」と。そして今までの思い出を初対面から亡くなる約3ヶ月前に公に姿を見せた自らの展覧会への出席まで写真と文で紹介していく。
写真のほかに著者の肖像画も載せてあるのだが、著者は画伯が最後に書かれた肖像画を表紙につかった。著者はモデルになった年代によって年齢が的確に現われているところが素晴らしいと絶賛しているが、初めて著者の肖像画を描いたときに「眼の光が普通の人より強いのでそれで眼が大きく感じられる」と画伯がいった著者の特徴は最後の肖像画にも描きこまれていたのだ、完成に15分とかからなかったのに。
解説でも指摘されているが、この作品には「老い」という別のテーマも実は描かれていて、この本が出版されてから10年、単行本からだと20年が経過するが、決して古びた感じはしないのである。