セコい政府のセコい住宅政策
★★★★★
セコい政府による「普通の家庭」に対しての持ち家振興策の問題を指摘した本
就職→独身寮→ケコーン→アパート→子供できた→マンション→出世→持ち家
という一連のルートに乗った人のみを支援する政策を行ってきた
こうすることで福祉政策と住宅政策を分離して財政的負担を軽減することが出来た
しかし弊害としてルートから外れたり乗れなかったりした人は住宅で苦労することとなった
そっから先のは他の書評に譲るとして、若干批判的なことを書く
新自由主義を批判するんだけど、たとえば歪んだ借り手保護の制度を改めることで
多様な住宅を競争する中で低い値段で供給される、という可能性もあるわけで
なんか謎の仮想敵をつくっている感じがするんだけど、すこし劇画的じゃないかな?
需要側は一定はある訳なので、どちらかと言えば供給側の問題で
それだと「住む人」に補助金を出すという本書の主張は妥当ではあるが
住宅を供給する側に対してのインセンティブ設計もまたすべきだと思うがな
あとブーマーとかユリなんとかとか見たこともない用語が出てくるんだけど
本文で流れに乗って使い始めに意味が書いてあるだけなので読み飛ばすと訳が分からない
都市思想論とか建築思想論とかの人同士で輪読するなら良いんだけど
この本の目的は住宅政策の縦割りを打破することにあるわけなので
国土・住宅・都市・金融・福祉・雇用とかの他の分野の人に読んでもらう必要があるので
末尾に再度整理した注釈を付けるべきなんじゃないんだろうか
あと少し面白いと思った点を書いておく
神戸大で学んだ神戸大の先生なので、関西圏の大学の元学生へのアンケートを行っている
関西出身で地元の大学に通い、東京の会社か大阪の会社に就職する、というパターンで
東京出身者にとっては地元就職としての東京に本社のある全国企業があり
他の地方であれば地元の大学や地元就職も率も低いのである
あのアンケートのある種の条件の面白さにぴんと来るのは同じ関西出身者だけではないか
住宅って、基本のきです。
★★★★★
・なぜこんなに住みづらい世の中なんだろうか。きっと、理由があるはずだと考えた方にこの本をお薦めする。就職してにアパートに入り、結婚して少し広い賃貸マンションに移り、子供ができて分譲マンションや戸建てを取得する過程を住宅すごろくという。我が国に高度成長期を担ってきたサラリーマンたちはそうした持ち家取得をゴールとする人生設計を走ってきた。しかし、今の20,30歳代はどうだろうか。
・そして、現在、ハウジングプアーの問題もでてきた。
・この本では、男女、年齢別に住宅の現状を詳細に分析している。そして、何が問題になるのかも指摘している。
・住宅は、私たちの生活に希望と勇気を与えてくれる基本的なものだと思う。
漸く本物の住宅政策論が日本に
★★★★★
発刊当初直ぐ購入し、最近再読した。内容は豊富且つ緻密で、再読しても教えられるところが多い。本書によって、多重多層的な社会における日本の住宅事情がよく理解されると共に、統計資料に自らの分析的作業を加えることによって新たな事実が実証される。良書であることは言うまでもないが、知る限りにおいて、我が国の住宅政策論として、漸く欧米のそれらに肩を並べることが出来た初めての書であろう。
数々の住宅政策論を読んできた。しかし、その殆どが(本書の言う)「主義」への傾倒が著しく、政府統計を適当に配置して、白紙状態の読者を説得しようとしたに過ぎない書物だった。洛陽の紙価は間違いなく下がりつづけ、読み通すに費やした時間を悔やむことが多かった。高名な大学者の著書もこの例に漏れない。
外国事例の紹介例に至っては、著者自らが殆ど原書を読んでいないか、言語的素養が足りないかのどちらかで、信頼性に欠き、日本語として理解しがたいものも少なからずあった。本書は、最新事情にも詳しく、この方面でも要件を十分に満たす。唯一また随一の住宅政策論書として、強く推したい。
私はどうして持ち家に住んでいるのか?
★★★★☆
私はどうして持ち家に住んでいるのか?
平山洋介さんは住宅問題を専門に研究なさっている
神戸大学の教授です。
今、私がどうして持ち家に住んでいるのか?あるいは
どうして家を買わねばと思ってしまうのか、漠然と
感じている疑問を社会のシステム(=持ち家政策)と
いった側面をみることで、分からせてくれるる本です。
論文的な内容で多少データーが多すぎる感は否めませ
んが、自分の住まい感を空間・デザインなど一般に語
られることの多い側面からではなく、政治・経済とい
った切り口からおしえてくれる良書です。
住宅豆知識 ”http://jyuutakujyuutaku.blog104.fc2.com/”
がっつりと住宅問題に喰いついている好著!
★★★★★
“いずれは持ち家に住みたい”と願うのはごく自然なことだと考えていた.が,その背景には,家族向けの融資制度や企業の福利厚生制度など「家族」や「企業」に依存した日本独特の住宅取得システムが働いているからなのだと本書を読んでわかった.
住宅政策を正面から取り上げる本が稀少ななかで,「住まい」についての疑問に答えてくれるとともに,具体的にそのあるべき方向について提起した力作である.本書が新書として出版された意義は大きい.
また,建築・住宅のみならず,社会保障や福祉国家の勉強・研究をする人にも大いに参考になると思う.住宅システムと福祉は密接な関係にある.
女性,若者,団塊の世代,高齢者などのグループごとに実証的データに基づき住まいの現状と問題点が述べられている点もわかりやすい.
私たちは心のどこかで住まいについては「自己責任」と諦観してはいないだろうか.もう一度,社会問題としての住まいの問題に著者のように真摯に向き合うべきではないだろうか.