‘理想国家’とは‘美しい国’なのか?
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本書の解説ではハイデガーとヘーゲルとの類似性が考察されているが、私見においてはハイデガーはヘーゲルよりもプラトンを意識していたのではないかと思われる。‘イデア’の哲学者プラトンは、ハイデガー同様、哲学と政治を結びつけて‘理想国家’を作ることを目指していた。結果的に二人とも失敗したのだが、その内容は異なる。プラトンは端から権力者とうまくいかなかったのだが、国家社会主義党によってフライブルク大学の学長に選出されたハイデガーがすぐに辞任したのは、ハイデガーがナチスを見限ったように思われる。つまりハイデガーにとって‘理想国家’をつくるためにナチスでは色々な意味で役不足だったのではないだろうか。本書はハイデガーとナチスの関わりを知るために最初に読むべき最良の入門書。