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「モノと女」の戦後史―身体性・家庭性・社会性を軸に (平凡社ライブラリー)

価格: ¥926
カテゴリ: 単行本
ブランド: 平凡社
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モノが変える女の世界 ★★★★★
戦後の女性が、自分の意思にもとづいて生きる、という「権利」を獲得していく過程を、職場でのプレゼンスの拡大といったいわゆる「社会進出」からではなく、身近な「モノ」の変容から描いていく本である。もはや「当たり前」のように私たちの日常生活に溶け込んでいる「モノ」たちは、しかしちょっと過去を振り返ってみると、その登場によって日本の女性の行動パターンや意識や感覚を決定的に変化させたのだ、というミクロながら刺激的な史実が、9つの事例を通して明らかにされる。
例えば「洗濯機は、家事労働を軽減させただけではなく、炊事しながらの洗濯、洗濯しながらの掃除というように、家事の処理方法を根底から変えるものであった」。それまで個別的に処理されていた家事を並列的に実行できるようになったことは、家事の行なわれるプロセスや環境を変化させ、当事者の生活世界を別のステージへと移行させた。洗濯板に代わり普及したこの新たなモノは、家庭内の時空間をも再編成してしまったのである。
例えばストッキングは、その技術的な進化と価格の低減によって、「六〇年代はじめの数年間に、「おしゃれ用品」(高級品)から「必需品」へ、さらに「消耗品」へと、劇的な転換を経験することになった。それは同時に、みる側(男性)にとっての「美しさ」よりも、着る側の活動性や合理性を、女性たちが重視していく過程でもあった」。はじめは男性中心社会における女性内の地位の差別化のためのファッションとして機能したストッキングも、廉価のシームレス・ストッキングの出現によって、働く女性にとって単に履き心地のよいモノとなり、あるいは、ミニ・スカートと共に登場し瞬く間に一世を風靡したパンストのように、女性が自己主張をするのためのファッション・アイテムとなっていったのだ。
さらに、新しいモノの浸透は、時代の変化をもたらすと同時に、その「変化」を実感させてくれもした。
例えば「アンネ・ナプキン」という、機能性にあふれ水にも流せる革新的な生理用品の誕生によって、女性たちは「戦後の終焉」を身体的に経験し、新しい変化の多くがそこからはじまる「私自身の時代」をもつようになった」。あるいは、手帳もまたそうである。女性の「生活圏が広がるとともに、時間についても、家庭の時間にかわって個人の時間がふえていく。そして、予定をたて、スケジュールを調整するために、時間の配分や管理が必要になる。夫婦・親子単位のつきあいをこえて、自分がコアになった新しい人間関係が広がり、自分だけの住所録や電話番号の管理の必要を生みだす。その過程は、同時に、女性が情報の受信者にとどまらず、送信者ないしは発信者になっていくことでもあった」。女性の「社会進出」と個人的な活動の場の拡大という新事態は、手帳に書き込まれたそれぞれの女性の「予定」によっても、再確認されたわけである。
その他にも、下着・避妊具・流し・トイレ・タバコといった、ほぼ文字通り生活密着型のモノたちの変遷から、女性をめぐる生活の革命が論じられており、どれも非常におもしろかった。